Commentary
中国の積極的な「仲介外交」とその大きな限界
イラン・サウジ国交回復に成功、中東和平は失敗
ウクライナ戦争がこう着状態になる中で、中国の仲介に期待を寄せる声は絶えない。中国も特使を派遣するなど、仲介外交を試みる姿勢を見せた。しかしウクライナ問題で中国の仲介外交が動き出すことはないであろう。そもそも中国はロシア寄りの立場をとっており、ウクライナとロシアの主張には隔たりが大きく、その着地点を探ることは難しい。
しかし中国は8月5日から6日にかけてサウジアラビアで開かれたウクライナが提唱する和平案について協議する会合に参加した。中国がサウジアラビアと親密関係を有していることから、その参加を促すために、アメリカがサウジアラビアを開催地に選んだともいわれている。この会合にロシアは参加しなかったが、世界42カ国が参加した。中国は従来の立場を繰り返しただけに終わったが、国際社会でのプレゼンスをにらんで中国は会合への参加を選んだ。
中国の仲介外交に垣間見える「大きな限界」
パレスチナ問題でも、またウクライナ問題でも、中国の仲介外交は動き出しても成功する可能性は極めて低い。そもそも中国の仲介外交の歴史が浅く、仲介外交のスタイルも西側諸国と大きく異なっている。スイスやドイツなどの西欧諸国にとって調停外交はなじみ深い外交手段であり、アメリカの最初の調停外交は1905年のポーツマス条約の時である。他方、中国が初めて調停外交に乗り出したのは2000年代初頭である。
西側諸国と異なり、中国の調停外交はリスク回避の姿勢が目立ち、現状維持を目指している(注3)。こうした特徴から、対立双方がもともと和解の流れにあるサウジアラビア・イランのようなケースは成功しやすい。しかし、パレスチナとイスラエル、ロシアとウクライナのように双方が著しく対立している場合は、中国の仲介外交は不発に終わる可能性が高い。
このように、中国の仲介外交には大きな限界がある。それでも、国際社会でのプレゼンスを高めるために、今後も国際ないし地域の紛争問題に中国は積極的に関与していくであろう。
(注1)
安倍首相の会見要旨「中東で日本ならではのかじ取り」日本経済新聞 (nikkei.com) https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50219390W9A920C1EAF000/
(注2)
卡塔尔学者:“一带一路”倡议对中东地区至关重要 中国日报网 (chinadaily.com.cn) https://china.chinadaily.com.cn/a/202305/10/WS645b6144a310537989373957.html
(注3)
「中国の調停外交」青山瑠妙
01-10.pdf (jiia.or.jp)