Commentary
「剰男」「剰女」になるのはどんな人か、少子化とどんな関連があるのか
中国総合社会調査(CGSS)の個票データから読み解く
低い学歴を代表する中卒者の未婚率を男女別に見た図7aによると、2005-15年における男性の未婚率がおよそ40%で推移したが、その後上昇する傾向に転じ、2021年調査では57.1%に上がった。対照的に、女性のそれは同期間中低下する傾向にある。婚活市場における低学歴の男性が売れ残ったという「剰男」が近年顕在化したということである。
他方の高学歴を代表する正規大学・大学院を出た者の未婚率を表す図7bをみると、男女ともその未婚率が時間の経過と共に上昇する傾向にあると分かる。特に2017年調査以降、女性の増加傾向が際立つ。晩婚化が進む中、高学歴男性は比較的学歴の低い女性と結婚する可能性がある一方、高学歴女性は加齢と共に、高学歴男性との出会いが益々難しくなる。つまり、未婚の20代高学歴女性は生涯結婚しない(できない)「剰女」となる可能性が増すのである。
選択の自由が広がっている現代社会では、結婚しないこともあって当然である。しかし、「剰男」「剰女」という社会現象は結果的に晩婚化、未婚化という別の社会問題を引き起こし、さらに、新生児の数が減少するという少子化も促される。このような連鎖反応に細心の注意を払う必要がある。
むすび
日本はこの間、少子化、高齢化、生産年齢人口の減少、総人口の減少を経て、もう少しで高齢人口も減少する局面に入ると予測されている。新興国の中国は急速な経済成長と共に日本と全く同じような人口転換のプロセスを経験し、しかも、その速度がより一層速い。両国で観測されるこの人口動態の発生メカニズムに共通点が多いが、相違点もある。
ここ40年間の中国では、高等教育の発展→男子劣化と女性の高学歴化→結婚に関わる伝統文化の存続→(1人っ子政策に起因した歪(いびつ)な男女比も影響して) 「剰男」「剰女」現象の広がり→晩婚化・未婚化の急進→少子化、という内的関連が見え隠れする。いささか単純化しすぎたのかもしれないが、本稿はCGSSからの関連情報を活用しそれを実証してみせることができた。
近年の中国では、就職難もあり、大卒者の修士・博士課程への進学が政府から強く推奨されている。男子劣化の中、大学・大学院における女性の割合が上昇しつつある。こうした状況が変わらなければ、「剰男」「剰女」が今後も増え続け、晩婚化、未婚化、少子化も必ず深刻化するだろう。男子劣化の社会経済に与えるインパクトは計り知れない。