Commentary
「剰男」「剰女」になるのはどんな人か、少子化とどんな関連があるのか
中国総合社会調査(CGSS)の個票データから読み解く
大卒や院修了者の場合、その結婚相手の状況はどうであろうか。ここで、自分より学歴の低い人と結婚した大卒以上の全体比を男女別に算出し、その結果を図5に示す。同図から分かるように、1990年代までの半世紀にわたり、大卒以上の学歴層においても、女性は自分より高い学歴を、男性は自分より低い学歴を持つ者と結婚する傾向が強い。また、時代の推移と共に、女性の高学歴化も影響し、自分より学歴の低い女性と結婚した男性の割合が低下し続けている。裏を返せば、大卒以上の学歴を持つ男女の結婚が高等教育の発展と共に増えているということである。
とはいえ、男性に比べ、大卒以上の学歴を持つ女性は、中華人民共和国の建国直後の1950年代と、改革開放初期の1980年代を除く長期間にわたって、自分より学歴の低い男性と結婚した割合が低く、しかも、安定的に推移していた。1950年代の高学歴女性は非常に希少な存在であり、裕福な階層の出身者が多いはずだったが、政権を取った共産党の統治下で学歴が低いものの、権力を持つ男性の役人等と結婚する者が多かったと推測できる。また、1980年代の高学歴女性が、純情が謳歌(おうか)されたその年代に、好きな男性を結婚相手に選ぶこともよくあった現象である。
高等教育の発展に伴い、婚活市場で静かな変化が起きつつあるものの、それは主として男性の方で見られるものであって、女性に関してはほぼ一貫した傾向が見られる。また、その男性の方の変化も女性の高学歴化に起因した部分が大きく、人々の結婚観に関わる潜在意識または社会慣行が大きく変わったというわけでもない。高等教育を受けた女性がより高い学歴を持つ男性との結婚を追求する、という社会慣行は当面大きく変わらないと見てよかろう。
3.「剰男」「剰女」と少子化へのインパクト
学歴社会における男子劣化、婚活市場における伝統文化の存続が相乗し合った結果、結婚したいのにその相手が存在しない高学歴女性が多数いる一方、学歴の比較的低い層に堆積する男性の多くが選ばれなくなっている。増え続ける「剰男」「剰女」は正しくこのような人たちを言い表す用語法なのである。
図6(a・b)は出生年代別、学歴別、男女別に見た未婚率を表している。同図から下記のような統計的事実が分かる。①出生年代の経過に伴い未婚率が上がり続けている、②学歴に関係なく男性の未婚率が女性のそれを上回っている、③近年、大専卒以上の未婚率が高卒以下より高い傾向を見せている、④大専卒以上の未婚率における男女格差が比較的小さい、⑤高学歴女性の未婚率がそうでない女性よりはるかに高い(1980年代生まれが41.4%対17.9%、1990年代生まれが80.7%対50.1%)、など。
もちろん、図6は男女別に見た学歴と未婚率の関係を表したにすぎず、そこから「剰男」「剰女」の実態は読み取れない。そこで、20代のサンプルを抽出し、この世代における男女別未婚率を11回の調査別に集計してみると、図7(a・b、次ページ)が示すような興味深い結果が得られた(都市だけが調査された2003年を除く)。