Commentary
「剰男」「剰女」になるのはどんな人か、少子化とどんな関連があるのか
中国総合社会調査(CGSS)の個票データから読み解く
高学歴化と共に男子劣化も顕著に進んできている。ここでは、男性と女性の最終学歴別人口割合を生年別に算出し、両者の差を求めたが、図2はその結果(男性-女性)を示している。同図から見て取れるように、1970年代生まれの世代までは、女性より男性の高学歴保有率が常に高かったが、1人っ子政策が始まった1980年生まれの世代を境に、男性優位が失われ、女性の高学歴保有率は男性のそれを上回るようになった(負の値)。そして、1990年代生まれ以降、大専、大学、修士のすべてにおいて女性優位が確立するようになった。ただ、博士において男性はわずかながら優位を保っている。
このような女性優位あるいは男性劣位をより正確に議論するため、高卒後、党学校や通信教育等を通して学位を手に入れた、いわゆる成人教育の高学歴者を除外して、全日制正規大専・大学・大学院を最終学歴に持つ者に絞って確認する必要がある。幸いに、CGSSには最終学歴の情報が豊富で、それを利用すれば、出生年代別、男女別の正規大専卒以上の全体比(保有率)を算出することができる。図3はCGSS2003-21の12回の調査をプールして得られたものである(都市と農村の両方を含む。以下同)。
同図から分かるように、正規高等学歴の保有率はやや高めのようになっているが、トレンドは人口センサスの結果とほぼ同じである。また、男性優位から女性優位への転換も明確に観測されるが、その逆転は成人教育も含む場合の1980年代よりおよそ10年遅れて起きた。具体的にいうと、1990年代前半と後半、2000年代前半に生まれた者において、女性の正規高学歴保有率は男性よりそれぞれ1.3、7.1、12.4ポイント高くなった。
婚活市場における伝統文化の存続
周知の通り、中国では、女性は自分と同等以上の階層(学歴や収入)に属する男性を、男性は自分の階層を上回らない女性を、結婚の相手に選ぼうとする伝統文化または社会慣習がある。ここで、学歴に焦点を当てて検証してみる。
図4は異なる年代に結婚した人々とその配偶者の学歴がどのように違っているかを男女別に見たものである。具体的には、自分より学歴の高い人と結婚した人が全体の何%を占めるかを男女別、初婚年代別に考察することにより、上述の社会慣習の有無や変遷を明らかにするということである。
図には示されていないが、結婚の年代を問わない、すべてのサンプルを対象とする集計結果によれば、男性では自分より学歴の高い人と結婚した者の割合は、中卒以下、高卒、大専卒がそれぞれ8.3%、7.2%、11.1%であるのに対し、女性ではその割合がそれぞれ16.6%、19.8%、24.8%に上る。
結婚年代別に見た図4よりさらに2つの特徴点が見出される。第1に、上述の社会慣習は高等教育が進んでいなかった1970年代までの世代においてより一層際立つ。自分より学歴の高い女性と結婚した男性はわずかしかいなかったのとは対照的に、自分より学歴の高い男性と結婚した女性の割合はほとんどすべての年代で見られた。
第2に、男性に関しては、結婚年代が若いほど、自分より高学歴女性と結婚した者の割合が急速に高まった。2000-21年に結婚した者の中、そのような男女格差が各学歴層でほぼ消えた。女性の高学歴化が著しく進んだことが背景にある。