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Commentary

再エネ大国・中国――脱炭素への超えがたい壁
COPは言葉遊びをやめて現実的な対策を議論せよ

堀井伸浩
九州大学経済学研究院准教授
経済
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2023年12月13日、アラブ首長国連邦のドバイで開かれたCOP28で文書採択を喜ぶ各国の交渉官たち(共同通信IMAGE LINK)
2023年12月13日、アラブ首長国連邦のドバイで開かれたCOP28で文書採択を喜ぶ各国の交渉官たち(写真:共同通信)

 中国が消費している化石燃料は2022年時点で、石油は世界全体の14.7%で米国の19.2%に次いで世界第2位、天然ガスは9.5%で米国の22.4%、ロシアの10.4%に次ぐ世界第3位、そして石炭に至っては54.8%で断トツの世界最大である(第2位のインドは12.4%)。

 他方で、風力や太陽光など再生可能エネルギー(再エネ)の導入状況も世界一なのが中国である。太陽光の設備容量は世界全体の37.3%、発電量で同32.3%と一国で圧倒的なシェアを占め、風力も設備容量は同40.7%、発電量で同36.2%となっている。化石燃料、とりわけ石炭を圧倒的な量で消費しつつ、クリーンと目される再エネも世界最大の導入国――という相矛盾した面を中国のエネルギー構造は持っているのだ。

1次エネルギーに占める石炭比率、2023年は上昇

 中国の主要エネルギーは石炭であるが、長期的にみると下の図中の折れ線が示すとおり、1次エネルギーに占める石炭の比率は減少傾向がみてとれる。1980年代に中国経済の高度成長を支えるエネルギー源として消費拡大したことでいったん反転したが、1990年代後半に再び減少した。2000年代に入ると再び上昇し、棒グラフのとおり、石炭消費は急増したが、2007年の72.5%を2000年代のピークにその後急速な低下を始めた。2021年には55.9%にまで、わずか14年で17ポイントの急減であった。

 中国の1次エネルギー源別消費量の推移

中国の1次エネルギー源別消費量の推移
(出所)『中国能源統計年鑑』各年版および国家統計局公表データより作成

 2007年以降の石炭比率の低下をもたらしたのは、図中棒グラフの紫で示される、中国でいうところの「非化石エネルギー」の増加によるところが大きい。その中でも風力や太陽光といった再エネの導入が、風力は2006年から、太陽光は2012年から本格化したことが寄与している。図中棒グラフの青で示される石炭の消費量をみると、2000年から急増していた石炭消費量が2012年以降には横ばいになっているのが確認できる。

 その後も非化石エネルギーの消費量は順調に伸び続けており、2022年には再エネの新規導入量は太陽光が86GW(ギガワット)、風力が37GWで合計123GWとなった。これは世界の再エネ新規導入量の46.2%に相当し、同年の欧州における再エネの新規導入量は59GW、米国は同25GWであるのと比べるとケタ違いの規模であったといえる。

 しかし改めて図をみると、2022年は石炭の比率低下は反転していることがわかる。2022年の石炭比率は56.2%、前年比でわずか0.3ポイントながら上昇している。2011年以降は一貫して石炭が1次エネルギーに占める比率は低下し続けてきたことを考えると、上昇幅はわずかとはいえ、注目すべき変化である。この年の再エネの新規導入量が前述のとおり、ケタ違いの規模であったことを考えるとなおさらである。

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