Commentary
中国メディアの分析に役立つ香港のWiseSearch
中国学へのミクロデータ活用法:企業関係データ編⑤
WiseSearchは網羅的で大規模な新聞データを提供していますが、利用する場合は注意しなければいけない点もあります。
まず、WiseSearchに選ばれた新聞は中国都市部にあり、市場シェアや社会的な影響力が大きいものです。県レベル以下の新聞などのデータは含まれていません。また、私の知る限り、WiseSearchを利用する際、特定の新聞を指定してすべての記事を収集する方法は提供されていません。これらの限界はリサーチデザインを考えるときに考慮すべきです。
さらに、WiseSearchはいわゆる新聞の切り抜きであり、新聞のすべての記事が収録されているわけではありません。とりわけ2000年代前半の新聞記事の欠落が多いです。慧科訊業は新聞記事を収集した際に意図的な選別はしていなかったと強調していますが、学術目的で利用する際には、欠落記事の規模と内容を確かめられないことに注意が必要だと思います。
中国研究の新しい可能性を提示
前述した博論では、WiseSearchをつうじて大量の新聞データを入手できたことは喜びましたが、それをどのように分析に活用するかには苦心しました。私の場合、テキストをデータとして分析する手法、つまり量的テキスト分析の手法を入念に勉強し、新聞記事を数値化して、ほかのデータセットと組み合わせて因果関係を検討することで、先行研究とは一線を画すことができました。
中国における研究の難しさの1つは、分析に必要なデータが公開されていないことです。とりわけ近年、政治経済関連のデータへのアクセスがますます困難になりました。
ですが、前述したHuang and Luk(2020)のような新聞記事の量的テキスト分析によって潜在変数を発見していく研究は、中国研究の新しい可能性を提示しています。中国政治経済分野の研究者になるためには、みなさん、ぜひ多様なデータを活用する可能性を検討してみてください。
参考文献:
Huang, Y., & Luk, P. (2020). Measuring economic policy uncertainty in China. China Economic Review, 59, 101367.
于海春(2023)『中国のメディア統制: 地域間の「不均等な自由」を生む政治と市場』勁草書房
中国計算機報(2016)「慧科:对全媒体数据挖掘获知『真相』」https://www.wisers.com.cn/about/newsDetail_631.html(2024/01/14)