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Commentary

夢は諦めて「職場を粛清」している中国のZ世代
「00后」のネットスラングで知る現代中国①

張志和
東京大学大学院博士課程
連載
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スマホを見る中国・北京の若者たち。「躺平」(寝そべる)というネットスラングが流行するほど、就業競争の激化などで夢を諦める人が多いという(写真:共同通信IMAGE LINK)

 00后はいかにして職場を粛清するのか? 要するに、00后は上司や先輩に対する態度が従来の世代とは異なる。仕事がプライベートに影響することがあってはならないと考え、残業命令には抵抗し、仕事以外の時間に上司から連絡が来ても応じない。先輩や上司は全員平等な同僚だと意識しており、彼らに対しては必要以上に服従せず、互いの尊重を求めている。

 さらに、会社の宴会などには参加せず、酒の誘いも断り、上司からの叱責に対してはハラスメントだとして抵抗するなど、自分の自由と権益を確保する傾向が強い。

 こうした傾向は、ひとりっ子たちが甘やかされて育てられたことに加えて、教育をつうじて西洋の自由平等の価値観が広がり、伝統的な東アジアの家父長制に対する反発が起きているとも指摘されている。中国の伝統的な「孝」の道は、生んでくれた両親に対して無条件に従順であることを求めている。家父長制とは、家庭や氏族のみならず、あらゆる組織において同じく無条件にリーダーに従うことを意味する。これは00后にとっては平等の理念に反しており、さらに彼らの独立かつ自由な人格を否定するものとみなされる。ゆえに00后は家庭の中でも、職場の中でも、伝統的な価値観に対して日々挑戦している。

毛沢東の言葉――「世界はきみたちのものである」

 競争に勝つことを諦めた00后は、夢は持たず、自由な生活を確保することを生き方のポリシーにしている。そうした生き方を職場で貫こうとすると、職場の粛清になる。

 毛沢東はかつてこう言った。

 「世界はきみたちのものであり、また、われわれのものでもある。しかし、結局はきみたちのものである。きみたち青年は、午前八時、九時の太陽のように、生気はつらつとしており、まさに、旺盛な時期にある」

 今の中国の若者はかつての世代とは大きく異なる。そうした世代の特徴はまだ政治的、経済的、社会的な変化に反映されていないかもしれない。なぜなら、若者はまだ社会に出たばかりで、羽が伸びきっていないからである。しかし、いずれ彼らが各業界の担い手になる日が来る。その時は、巨大な変革を起こすだろう。

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