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Commentary

夢は諦めて「職場を粛清」している中国のZ世代
「00后」のネットスラングで知る現代中国①

張志和
東京大学大学院博士課程
連載
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スマホを見る中国・北京の若者たち。「躺平」(寝そべる)というネットスラングが流行するほど、就業競争の激化などで夢を諦める人が多いという(写真:共同通信IMAGE LINK)

みんなが躺平を選んでいるのなら、なぜ00后だけが職場を粛清できたのか? これについては、「内卷」(内向きで、無意味な競争)という別のキーワードが関係している。

数年前から中国のネット上で内卷が非常に流行している。一般に、同じ業界内で絶え間なく競争が続くことを指している。産業における競争の存在は効率と品質の向上に寄与するが、過度な競争は企業や従業員にとっては必ずしもよいことではない。とくに個人にとっては、過度な努力は仕事以外の生活を犠牲にすることを意味し、これは過労などの生理的な健康問題を引き起こすだけでなく、巨大な心理的なプレッシャーをもたらす。「寧願累死自己,也要卷死同行」(自分が疲れて死んでも、同業者を道連れにしたい)というネット上の発言もあった。

中国製品が安く、品質もまあまあといえるほどになったのも、労働者たちの死ぬまで頑張る向上心と関係があるかもしれないが、このような努力は長く続けられないことも想像にかたくない。努力すれば報酬が得られるのであればよいが、それが限界にきて、努力が十分なリターンをもたらさなくなると、無意味な内卷になってしまう。この場合、「卷王」(絶え間ない競争の唯一の勝者)になった企業もしくは個人は市場や資源を独占できるようになる一方、もっと数多く生まれたのは報酬も希望も失った敗者たちである。

00后が就職した時期には、中国の企業間の内卷がすでに限界に達していた。どの業界においても激しい競争で勝つために、コストを抑え、雇用者の数を減らし、労働時間を増やしていたが、賃金は上がらなかった。「努力は報われる」時代を経験した90后や80后はそれでもまだ希望を持っていたが、社会人になったばかりでこの残酷な状況に直面した00后たちは、ただちに幻想から目覚め、断固として抵抗することを選んだ。

「独生子女」――中国史上空前絶後のひとりっ子世代

中国は1979年から計画生育政策を実施した。都市部では夫婦につき1人の子どもしか持てなくなった。そのため、80后、90后、00后の世代の場合、とくに都市戸籍の者はその多数が「独生子女」、すなわち「ひとりっ子」である。しかし中国政府は2011年以降、徐々に2人目や3人目の子どもを持てるように政策を緩和した。つまり、ひとりっ子政策が実施されていた1980年代~2010年の間に生まれた80后、90后、00后は、空前絶後のひとりっ子世代である。

中国では、ひとりっ子はしばしば「小皇帝」(小さな皇帝)、「小公主」(小さな姫)と呼ばれている。これは父親、母親、祖父母および他の親族全員がこの唯一の子どもを非常にかわいがるためである。ひとりっ子は「衣来伸手、飯来張口」(服を着るときは手を伸ばすだけ、ごはんを食べるときも口を開けるだけ)だといわれることもある。

中でも、00后は経済が発展した中で生まれてきた、恵まれた世代である。彼らは洗濯、料理、掃除などの家事を自分でやることもなく、何か望みがあれば満たされ、家族は彼らの意思に従う。学校に行っても先生から厳しく叱られることも少ない。教師は叱ったら子を溺愛する親から抗議されるとわかっているからである。そのため00后は自己中心的であるといわれている。こうした世代が社会に入ると、上級者に服従することを求める伝統的な社会文化との軋轢(あつれき)が生じる。

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