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Commentary

夜の空に映し出される経済活動の内実
夜間光データを用いた中国経済研究の新視点

章超
同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士後期課程
経済
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夜間光データは、統計データが不完全な国や地域でも、実際の経済成長の水準を測定する指標になる。写真は超高層ビルから見た上海市内の夜景。2009年4月18日撮影(共同通信)
夜間光データは、統計データが不完全な国や地域でも、実際の経済成長の水準を測定する指標になる。写真は超高層ビルから見た上海市内の夜景。2009年4月18日撮影(共同通信)

夜間光データによる研究は中国でも見られる。近年、中国の経済学界では、夜間光データによる公式統計データの補完あるいは代替指標として使用する文献が蓄積されている。例えば、徐(2015) は夜間光データを用いて中国の実質経済成長率を測定した最初の成果である。1992-2012年における省級パネルデータを用いた計量分析により、夜間光データのDN値とGRPの間に有意な正の相関関係があることが指摘された。夜間光データはGRPの代理指標として使用できるというのである。また、同期間における国全体と各省の実質経済成長率の平均値が公式統計と一致せず、国全体では1%ポイント低く、東部、中部、西部の3大地帯ではそれぞれ1.5-1.8%ポイント程度低いことも判明した。

夜間光データを地域経済の水準を表す代理指標として用いる研究が数多く存在し、これまで懸念された中国の地級市や県級の統計データの欠損値や信憑性の問題は夜間光データの活用により、ある程度補完できる、と思われる。今後は空間経済学、GISなどの考えや方法を援用し、公式統計と共に夜間光データを中国経済の実証研究に活かしていきたい。

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参考文献

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