Commentary
香港の高層マンション火災で何が問題になったか
現地報道からその争点を整理する
多くの住民は日頃、マンション管理組合の運営に無関心であり、理事にもならず、会議にも出席しない。仮に関心を持ったとしても専門知識がないため、理事会の決定が正当かどうか判断しにくい。特に「市区重建局条例(都市再生局条例)」に基づいて設立された市区重建局(以下、市建局)の参考価格は、同局が許可した工事から算出されている。しかし、市場が談合で囲い込まれているため、水増しされた価格がそのまま参考価格となってしまい、一般住民には提示された価格が適正かどうか判断できなくなっている。たとえ価格の適正性や施工・資材の品質、さらには理事会・コンサルタント会社・請負業者間の癒着が疑われたとしても、理事会は日頃から人のよい高齢者や無関心な住民を訪問し、署名済みの代理投票委任状を集めている。そのため、住民総会で重大な決定について投票が行われる前には、事実上の決定権をすでに握っていることになる。その結果、一般住民は抵抗できなくなってしまう。一般住民が土地審裁処(土地裁判所)でマンション管理組合に提訴する場合、自分のお金で訴えながら、自分のお金(組合に支払った管理資金)で反論されるという状況になってしまう。
今回の火災をめぐっては、コンサルタント会社「鴻毅建築師」や請負業者「宏業建築」、大埔宏福苑管理組合の理事会などの関係者が次々と逮捕されたものの、詳細は現在も調査中である。しかし、すでにメディア各社は、これら三者に関わる疑惑を報じている。
たとえば、2017年独立系メディア「伝真社」の報道によると、沙田翠湖花園の修繕工事における談合入札の案件では、入札に参加した19社の請負業者の中に「宏業建築」も含まれていた。その評価だが、市建局の「建物修繕業者登録制度」(Building Rehabilitation Company Registration Scheme)では、「宏業建築」は「項目管理」において満点の100点と評価されていた。また、市建局を通じて150件以上の修繕工事コンサルタントを受託してきた「鴻毅建築師」は建材ビジネスにも関与しており、本来は落札後に利益申告を行うべきである。だが、独立系メディア「誌 HK FEATURE」の記者が、宏福苑の元管理委員会主席の鄧国権に対し、「鴻毅建築師」に「利益申告書」への署名を求めたかどうかを問い合わせたところ、鄧氏は「分からない」と返答した(注2)。さらに、宏福苑の当時の管理組合は、2024年1月に3億3000万香港ドル(約65億円)の修繕案を可決したが、この案を支持した人物の中には、当時の顧問であり、親中派の民主建港協進聯盟(=民建聯)所属の区議員でもあった黄碧嬌が含まれていた。「独立媒体」は2021年の時点で、黄碧嬌が高齢者の自宅を訪ね、委任状への署名を促したことがあったとすでに報じていた(注3)。
中国当局の存在感と国安時代の警戒心――自発的な支援はできないのか
11月27日0時のTVBニュースでは、習近平国家主席が、香港政府による火災の鎮圧・救助・負傷者の治療・被災者への事後対応を支援するよう、香港にある中央政府の出先機関に指示したこと、また隣接する深圳の消防車が蓮塘出入境検査場に集結していることが報じられた。こうした「指示」や「支援」に関する報道は、各メディアでも取り上げられていた。注意すべきは、「一国二制度」の下では、習主席の指示は香港政府に対してではなく、あくまで中央政府の出先機関に向けて出されたものであるという点である。深圳の消防車が出入境検査場に集結したものの、香港消防当局は中国本土からの支援を求めていないとされる。また、中央政府出先機関による支援とは、連絡用の緊急対策チームの設立、被災者への訪問、香港政府の要請に基づく物資提供などを指している。