Commentary
香港の高層マンション火災で何が問題になったか
現地報道からその争点を整理する
テレビ以外のメディアでも、防護ネットの問題点が取り上げられていた。火災発生の翌日、香港建造業総工会理事長の周思傑は、現行の法例では防護ネットの難燃性について定期的な検査を義務付けていないと述べた、と『文匯報』(11月27日)は報じた。さらに29日、独立系メディア「緑豆」は、宏業建築が別の修繕工事現場(富澤花園・富嘉閣)で、山東省濱州市の検査センターの検査に合格した山東製の防護ネットを使用していることを踏まえ、「宏福苑火災の背後で浮上する北京の責任問題と300億元規模の山東産業チェーン」を取り上げ、以下のように示唆した。
防護ネットの背後には、地方財政・雇用・輸出に関わる生命線となる産業が存在する。もし問題が山東、さらには「全国最大の化繊ロープ・ネット生産基地」を抱える産業クラスターにまで及ぶとなれば、「防護ネットは適法か」という問いは、香港の修繕工事現場における責任問題にとどまらず、中国本土の産業チェーン全体における監督体制や検査・認証制度へと広がることになる(注1)。
竹の足場――出火の原因だったのか
防護ネットと発泡スチロールについては、当初から上記のように大きな注目を集めていた。政府も親中派メディアも独立系メディアも、いち早く両者の問題点と火災の大規模化との関係を指摘していた。しかし、竹の足場が論争の種になった。とりわけ李家超行政長官が11月27日の記者会見で、「発展局が業界団体と会合を開き、竹の足場を金属製足場に置き換えるロードマップについて協議を進めている」と述べたことは、一部の市民の反発を招いた。竹の足場は一種の無形文化財として香港人のアイデンティティに関わっており、その使用は狭い空間でも発揮できる柔軟性・効率性・経済性に裏付けられた、総合的判断に基づく合理的な選択でもある。この点を踏まえた上で、本文ではメディアの報道のあり方に着目したい。
26日20時19分頃の記者会見では、消防処副処長の陳慶勇が「現場到着時には、竹の足場がすでに燃えており、室内やほかの棟へ燃え移る状況が確認された。〔中略〕現場の状況は非常に悪く、燃え上がった竹の足場やその他の燃えかすが絶えず落下してきた」と述べた。また、鄧炳強局長も「落下した竹製足場が緊急車両や建物の出入り口を塞(ふさ)ぎ、消防の救助活動を妨げた」と述べた(28日17時半・TVBニュースチャンネルより)。27日、英紙『ガーディアン』のオンライン記事による最初の関連報道は、「香港の高層住宅火災の延焼は竹の足場が原因だった可能性がある」と題していた。さらに、28日の『朝日新聞』も「燃えた竹の破片が飛散してほかの棟に燃え移った可能性があると消防当局はみている」と報じた。
ここで注意すべき点は二つある。第一に、前節で示した通り、政府も業界の専門家も、当初から防護ネットと発泡スチロールを主要な問題として指摘している。両者の問題点より先に竹の足場を大きく取り上げてしまうと、出火原因について誤解を招く恐れがある。第二に、竹の足場が燃えていたこと、その飛散による延焼、落下による救助活動の妨害はいずれも事実のようであるが、「竹の足場から出火した」と報じるのは、的確とは言い難い。