Commentary
中国の農村での棟上げ式と大宴会
中国とインドの農村社会の比較①
果村の家屋新築をめぐっては、「手伝い」(帮忙)と「棟上げ」(上梁)という重要な二つの節目の日がある。いずれもが村民小組内の近隣や友人などが参加しての共同作業の機会であり、午前中の共同作業の終了後には、主家において宴席が設けられる。
朝9時、二軒が同時に爆竹を鳴らし始め、花火も打ち上げられる。全村に響き渡る音が、祝祭の日の気分を盛り上げる。
もっとも、中国の農村ではかなりの頻度で爆竹や花火の音を聞くので、村民は慣れっこである。棟上げの日は、村内で主家と特別に関係の良い世帯が集結して建築作業を手伝い、大きな一本の梁(はり)をロープで吊り上げる棟上げが挙行される。そこに主家の主人が参加して、紙銭を燃やすなどの簡単な儀式が伴う。梁が屋根に固定される瞬間は、爆竹と花火が最高潮に達する。とても賑やかだ。
これは中国全土の農村に共通だが、冠婚葬祭や祝事には賑やかな爆竹を欠かすことができない。といっても、日本人が「爆竹」と聞いてイメージする「パチン」と弾けて終わる可愛いものではない。成人男子一人がやっと抱えられるほどの大きさの立方体の箱に、とぐろを巻いた蛇のような長く太い爆竹が何層にわたって詰め込まれた、そのような代物である。これが鳴り始めると、耳をつんざく破裂音が数十秒間、継続する。招待客はご祝儀と並んで、花火や爆竹を主家に送る場合もある。果村の棟上げの花火も主家の親戚や友人が送ったものであり、1セットで100元(約2000円)ほどもするそうだ。
棟上げでは、日本農村にもかつてあった、「餅投げ」に似た行事も展開する。広島の農村少年であった筆者の幼少期、家屋新築中の農家の田圃で「餅投げ」に参加した記憶が蘇る。1970年代のことだ。棟上げの日、新築中の屋根の上から、借り入れの終わった田圃に集まった近隣の人々に、餅のみならず、蜜柑など果物や菓子などが「おりゃ〜」の掛け声とともにばら撒かれる。子供らや女性らがなりふり構わず、拾い集め、時には見境なく奪い合う。子供らは特に菓子を狙う。山東果村の棟上げでは、投げられるのは餅ならぬ赤く色付けされたマントウ(花馍)と飴であるが、「奪い合い」の情景は実家での記憶と寸分違わない。