Commentary
中国のネットフェミニズム:男女対立が激化しつつある要因とは
「00后」のネットスラングで知る現代中国②
中華人民共和国成立後、世界中に広がるフェミニズム運動と男女平等を謳(うた)う社会主義思想の影響で、毛沢東は「婦女能頂半辺天(女性も男性と同じく天の半分を支えられる)」と提唱し、男性と女性は共に社会を建設する平等な労働者であると断言した。また、新政府は3月8日の国際婦女節(国際女性デー)を国の法定休日として制定し、男女の同一労働同一賃金を規定するなど、男女平等の実現に力を入れた。さらに文化大革命などの政治運動も伝統文化の影響を破ろうとし、結果としては「重男軽女」の思想に一定の打撃を与えた。
1979年から、一人っ子政策が実施された。子供が娘しかいない家庭では、娘を唯一の事実上の後継ぎとして認めざるを得なくなった。しかし他方、女児の堕胎及び産み捨てや産み殺しなどの惨劇が各地で多く発生したため、政府が法律によって出生前の胎児の性別鑑定を禁止するまでになった。それでもなお、一部の地域では「拼男宝(何が何でも息子を産む)」現象が依然として存在し、罰金や処罰を受けても息子が生まれるまで子供を産み続けるケースも少なくない。そのため、農村地域において、政府はやむをえず一人っ子政策を緩和し、「一人目の子供が女子なら二人目の子供を出産できる」と規定を変更した。2010年代以降、中国政府が二人目、三人目の子供の出産を徐々に許可することによって、「拼男宝」の現象は再び高まった。この現象を皮肉るために、「家里有皇位(家には男性家長の玉座があるので後継ぎが必要)」というスラングも誕生した。
こうして数人の姉と一人の弟という構成の家庭が中国で多く見られ、そこで生まれたネットスラングもあった。姉妹たちは「扶弟魔(読み方はハリーポッターの中の悪役であるヴォルデモートの中国語訳と同じ。弟をかいがいしく世話する人、という意味)」と呼ばれ、唯一の弟は吸血鬼ならぬ「吸姐鬼(お姉さんに依存する人、という意味)」と揶揄(やゆ)される。弟のために姉たちが金銭や労力を費やす現象は珍しくないようである。
このような歴史的、文化的、現実的背景の中で、若い女性を中心とする中国のフェミニストたちはますます怒りを感じ、ネット空間において反抗の声を上げ始めたのである。
「剰女」vs「普信男」:婚活市場で集中する対立
男女の対立が最も集中し、衝突が起こりやすいのは、男性と女性が直接に接触する婚活市場であろう。前述の通り、「伝宗接代(家族の血を継続させる)」という伝統思想の影響で、成人した男女は早く結婚して子供を持つことが今でも望ましいと見なされている。そのため、20代の男女は周囲の親族、友人、同僚、上司などからの「催婚(早く結婚しろ)」や「催生(早く子を産め)」の圧力に直面する。このような社会的風潮の中、20代後半を過ぎても結婚・出産しない女性は「剰女(余った女)」と呼ばれている。学業や仕事でどれほど成功しても、一度「剰女」というレッテルを貼られると、周囲の人々や婚活市場から嫌われる存在となり、女性として人生の失敗者と判断される。