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Commentary

台湾の原発再稼働をめぐる攻防
与党・民進党の政策大転換とエネルギー問題の未来

早田健文
『台湾通信』代表
政治
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発再稼働の問題は、台湾で繰り返される政治的な対立の中で、いまだに解決の方向性が見えていない。写真は「公民投票」で再稼働の是非が問われた台湾南部・屏東県の台湾電力第3原発。2025年8月3日。(共同通信社)
発再稼働の問題は、台湾で繰り返される政治的な対立の中で、いまだに解決の方向性が見えていない。写真は「公民投票」で再稼働の是非が問われた台湾南部・屏東県の台湾電力第3原発。2025年8月3日。(共同通信社)

実は、頼清徳政権の原発政策の転換は、これまでも閣僚の発言などから多くの兆候があった。頼清徳総統本人も、温室効果ガス排出の問題に関連して、「将来の新しい先端的な原子力技術に対して、開放的な態度を保つ」と語っており、原子力そのものを拒否するわけではないとの考えを示していた。ただ、現時点で仮に原発政策を転換したとしても、建設を停止した第4原発を稼働するにしろ、まったく新しい技術を導入した原発を建設するにしろ、相当な時間がかかる。だとすれば、当面はすでに退役した旧式の古い原発の再稼働に頼るしかない。

日本以上に深刻な電力供給事情

そもそも、台湾での電力供給の問題はかなり深刻な状況にあることが以前から指摘されてきた。日本に似て資源がなく、化石燃料を輸入に頼らなければならない台湾で、エネルギー問題は日本以上に深刻だ。2024年において台湾の発電量に占める割合は、石炭、天然ガス、石油を合わせて火力が78%だった。再生可能エネルギーは12%、原子力は4.7%だ。再生可能エネルギーのうち、約半分が太陽光発電、残りが風力発電だ。

その一方で、温室効果ガスである二酸化炭素排出の問題で、台湾は2050年までに、排出量を実質ゼロにするネットゼロ排出を目指している。そのためには、火力発電を減らす必要がある。ところが、原発全廃で4.7%が失われ、火力への依存がさらに高まった。これは、ネットゼロ排出政策に逆行するものだ。原発がない状況で、台湾でネットゼロ排出を達成するには、再生可能エネルギーの割合を60%から70%にまで引き上げる必要があると推算されている。

しかし、台湾での再生可能エネルギーの開発は決して順調とは言えない。2024年の12%は、当初目標の20%から大きく遅れている。しかも、再生可能エネルギーの太陽光発電と風力発電で、このところ問題が相次いで露呈している。まず、土地の狭い台湾での太陽光発電所(メガソーラー)の設置に関しては、以前から与党関係者への利益供与が問題視されており、実際に汚職事件にもなっている。蔡英文・前総統ですら、再生可能エネルギーをめぐる汚職は厳しく取り締まるべきだ、と主張している。

こうした中で、2025年7月初めに台湾を襲った台風のため、10数万枚の太陽光パネルが吹き飛ばされ、大量の廃棄物が発生してしまった。被害額は約50億円と見られ、2000トンのゴミを処分しなければならなくなったのだが、その処理がなかなか進まず、環境への影響が批判の的となった。

被害を受けた太陽光パネルは、洪水防止用の貯水池など主に水上に設置されていたもので、台風の時のような強風に耐えるように設置されていたかどうか疑問視された。台湾は太陽光発電所を設置できる土地が限られているため、ダムや養殖用の池などの上に設置する方法が奨励されている。これまでも、こうした方式による太陽光パネルの設置は問題が多いと指摘されていたが、この台風被害によって、設置に関する規制を強化する動きも出ている。

一方、再生可能エネルギーとして有望視されている風力発電は、洋上風力発電が開発の重点となっている。ただ最近、台湾東部の地上での設置計画は、環境への影響の不安から地元の強い反対を受けており、今後の開発全体への影響が懸念される状況だ。地熱発電も試みられているが、まだ初歩的な段階だ。

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