Commentary
四中全会後も続く習近平政権の混乱
予断を持たず、慎重に事態の展開の見極めを
さらなる混乱を予見させるのは、四中全会における欠席者の多さである。2022年の発足時点で中央委員には44名の軍関係者が含まれていた。2024年の三中全会で2名が粛清され、残り42名となっていたが、四中全会に出席したのは、わずか15名であった。党籍剥奪された者以外にも、多くの幹部が会議に出席できない状態に置かれていること、すなわち取り調べを受けている、あるいはすでに拘束されていることが推察される。中央委員の欠員が出た場合、候補委員から補充がなされ、四中全会でも11名が昇格したが、候補委員のリストのうち、上位にいる軍関係者5名がスキップされた。この5名は会議自体を欠席している。候補委員も同様に失脚状態にある者が少なくない可能性を示唆している。
特に混乱が大きいのはロケット軍である。2015年に習近平の肝煎(きもい)りで設立された軍種だが、歴代の司令員4名全員が失脚した。しかし、ロケット軍にとどまらず、苗華の政治工作部門はもちろんのこと、陸軍、海軍、空軍、武装警察などの各軍種、さらに各戦区の幹部も失脚しており、もはや特定の部門を標的にしていると言える状況ではない。また習近平の側近の一人で、中央軍事委員会弁公室主任などを務めた鍾紹軍にも何らかの問題が生じた可能性がある。鍾紹軍は2024年に国防大学政治委員の職に移ったことが確認されており、四中全会にも出席していたが、駐北朝鮮大使館のウェブページの活動報告において、国防大学政治委員が夏志和に交代していたことが明らかとなった。失脚こそしていないものの、すでに実権を喪失している可能性がある。
以上が四中全会前後の状況だったが、果たして、次に紹介するように、四中全会後にもさらなる混乱が続いている。2026年1月に、張又侠、劉振立の摘発が発表された。2022年に発足した中央軍事委員会は7名のうち5名が粛清され、残るは習近平と張昇民の二人のみとなった。このような混乱は文化大革命期の林彪失脚に匹敵するものであり、深刻な状況である。
一体軍の中で何が起きているのか。この連載でも以前言及したように、一連の摘発が習近平の主導のもとで進められているのか、それとも習近平への挑戦として展開されているのかというのは極めて重大な問題である(「止まらない反腐敗闘争と動揺する人民解放軍」)。しかし、習近平への挑戦説、あるいは2025年に流行した習近平失脚説の中心となっていた張又侠が失脚したことで、習近平の地位が動揺しているという説明は説得力を失った。確かに、粛清の対象となった将軍の多くが習近平と関係が深く、習近平に対する挑戦が水面下で生じた可能性も否めない。張又侠も習近平の盟友として知られていたが、対立的な関係に転じた可能性も否定できない。しかし、一連の軍の粛清で、高官のほとんどが失脚しており、習近平に対抗しうる存在はない。とはいえ、軍の内部はブラックボックスであり、外部観察者が得られる情報は限定的である。予断を持たず、慎重に事態の展開を見極めるしかない。
さらに、軍事関連産業、いわゆる「軍工系」の凋落(ちょうらく)も注目すべきである。中央候補委員には複数の国有企業幹部が名を連ねているが、張忠陽(中国航天科技前総経理)、袁潔(中国航天科工前董事長)、温剛(中国船舶前董事長)、余剣峰(中国核工業前董事長)などが四中全会を欠席した。いずれもすでに役職から解任され、失脚が報じられていた。軍の反腐敗闘争に関連していると思われるが、一世を風靡(ふうび)した軍工系も習近平の寵愛を失ったようだ。
党と政府でも続く反腐敗闘争
四中全会では、文官にも複数の欠席者が出た。金湘軍(前山西省長)、藍天立(前広西チワン族自治区政府主席)などすでに取り調べを受けていることが公表された者に加え、劉建超(前中央対外連絡部長)などのしばらく表舞台から姿を消している者もやはり引き続き会議を欠席した。
四中全会後も混乱は収まらない。政治局委員の馬興瑞は四中全会には出席していたものの、年末ごろから公の場に姿を現さなくなり、会議にも欠席し続けている。2025年に新疆の党委員会書記を退任し、閑職にまわされるという噂が流れていたが、今では失脚したことが確実視されている。習近平政権の混乱は深まるばかりである。
*本稿は、霞山会発行『東亜』2025年12月号に掲載された記事を転載・加筆したものである。