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Commentary

四中全会後も続く習近平政権の混乱
予断を持たず、慎重に事態の展開の見極めを

李昊
東京大学大学院法学政治学研究科准教授、日本国際問題研究所研究員
政治
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四中全会でもあらわになった習近平政権の混乱については、予断を持たず、慎重に事態の展開を見極めるしかない。写真は北京の四中全会開幕の前日に、会場とみられる場所を警備する関係者。2025年10月19日(共同通信社)
四中全会でもあらわになった習近平政権の混乱については、予断を持たず、慎重に事態の展開を見極めるしかない。写真は北京の四中全会開幕の前日に、会場とみられる場所を警備する関係者。2025年10月19日(共同通信社)

2025年10月下旬、北京で中国共産党の20期中央委員会第四回全体会議(以下、四中全会)が開催された。この四中全会では、5カ年計画が主要議題となったが、依然として続けられる反腐敗闘争の影響で、中央委員会に多くの欠員が生じ、また、多くの欠席者が出たことが注目を浴びた。

本来の論点は5カ年計画の策定

四中全会の本来の論点は、次の年から始まる5カ年計画の策定であった。計画経済体制は終焉(しゅうえん)を迎えたが、経済発展戦略としての計画は依然として5年ごとに作成されている。計画はかなり包括的であり、第15次5カ年計画の詳細についてここで論じることは避けるが、以下のような特徴を挙げることができる(編集部:関連記事として丸川知雄「中国経済の次の5年へ向けた展望」もご覧ください)。

第一に、科学技術の発展に大きく重点が置かれている。改革開放以来、中国は労働集約型の製造業を中心に、「世界の工場」となることで経済発展を実現してきた。しかし、それはもはや過去になりつつある。研究開発力が高まり、中国自身の技術力の向上が目覚ましい。通信技術やドローンなど、今やハイテク産業においても世界をリードする存在となっている。そのような状況において、科学技術、イノベーションが経済発展戦略の重点となるのは自然だろう。発表された計画の約2万字の全文には、「科技」(科学技術)が熟語を含めて46回、「創新」(イノベーション)が同じく61回も言及されている。

第二に、関連して、発展のクオリティの向上が強調されている。中国の経済発展戦略は長らくスピード重視で、粗製濫造(そせいらんぞう)の傾向が否定できなかった。しかし、近年はそのような非効率な発展を改め、質の高い発展が追求されるようになっている。計画全文の中でも「高質量」(ハイクオリティ)が25回言及されている。ただ、どのようにハイクオリティの発展を推し進めるのかについては具体性に欠けると言わざるを得ない。

第三に、安定が繰り返し強調されている。世界の成長エンジンであった中国においても、経済の減速は明らかであり、かつての高度成長を継続することは不可能となった。上述のクオリティの強調も経済の減速という現実を反映している面がある。成長の減速を取り繕うため、あるいはそれによる社会不安を打ち消すために、党や政府は、安定を強調せざるを得ないのだろう。計画では、「穏」(安定)という文字が43回も使われている。

経済減速への不安も滲(にじ)むが、計画全体としては、積極的な論調が繰り返され、中国の科学技術力、産業高度化、そしてさらなる発展への期待と自信が表現されていた。

軍の中で何が起きているのか

本来の議題である5カ年計画以上に、軍における反腐敗闘争の展開は世界中の注目を浴びた。2023年のロケット軍指導部の更迭(こうてつ)と李尚福国防部長の失脚以来、軍における汚職摘発が強力に進められ、続々と表舞台から姿を消す者が出ていた。その上で、四中全会の直前に開催された政治局会議において、何衛東(中央軍事委員会副主席兼政治局委員)を含む9名もの上将の党籍剥奪処分が決定された。特に現役の制服組である中央軍事委員会副主席の失脚は林彪(1971年)までさかのぼる異例の事態であり、衝撃は大きかった。すでに軍の混乱は前代未聞のレベルであるが、この混乱が収まる気配はない。

2022年の党大会で発足した中央軍事委員会には、7名のメンバーがいた。国防部長の李尚福、政治工作部主任の苗華、そして副主席の何衛東が次々と解任され、四中全会時点で残ったのは習近平(主席)、張又侠(副主席)、張昇民(規律検査委員会書記)、劉振立(連合参謀部参謀長)のわずか4名だった。会議では、張昇民が副主席に昇格したが、苗華の後任人事は行われず、中央軍事委員会の補充もなされなかった。李尚福の後任として2023年12月から国防部長を務めている董軍は中央軍事委員会入りを果たせず、通常国防部長が兼任するはずの国務院国務委員にも就任していない。依然として異例の軽量級の国防部長となっている。

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