Commentary
「第七世代」若手幹部の登場
2年後の党大会を見据えた人事が活発化

少数民族自治区の政府主席経験者は多くの場合、最終的に政治協商会議副主席のような名誉職に就く。浙江省長の劉捷と山西省長の盧東亮、まもなく江蘇省長になる劉小濤らは間違いなく、次世代指導者の有力候補となろう。劉捷は湖南省、江西省、貴州省を経て、浙江省に移った。早くから注目されており、2024年12月に第七世代最初の省長となった。盧東亮は第七世代の中でも1973年生まれで、とりわけ若い。4月に省長の金湘軍が規律違反で摘発されたことで、急遽(きゅうきょ)進められた人事であると思われる。劉小濤は、江蘇省長の許昆林が遼寧省党委員会書記に異動したのを受けて、9月末に江蘇省政府党組書記に就任した。まもなく正式に省長に就任すると思われる。広東出身で、同省の茂名、潮州、浙江省温州、江蘇省蘇州など沿岸地域の大都市でキャリアを積んできた。
後に控える第七世代の有望株
地方のナンバー3である党委員会副書記にも第七世代が次々に就いている。2025年8月現在、諸葛宇傑(湖北)、時光輝(内モンゴル)、朱忠明(上海)、楊晋柏(海南)、郭寧寧(福建)、謝衛江(湖南)がいる。この中で、諸葛宇傑と時光輝は早くから注目されており、昇進も早かった。次期指導部の有力候補であろう。
現在の地方指導者は1960年代生まれ、特に1965年から69年に生まれた者が中心となっている。一部はすでに中央委員となっているが、次の党大会で更なる昇進が期待される。代表株は、周祖翼(福建省書記)、趙一徳(陝西省書記)、殷勇(北京市長)、許昆林(遼寧省書記)などである。
一方で、地方の党委員会常務委員では、すでに第七世代が大勢力となっており、上で紹介した者以外にも、近いうちに昇進が期待される幹部が多く見られる。注目度が高いのは、例えば、劉強(山東省済南市書記)、劉洪建(雲南省昆明市書記)、費高雲(安徽省合肥市書記)、夏林茂(北京市常務副市長)、崔永輝(福建省アモイ市書記)、周紅波(江蘇省南京市書記)、曹立軍(四川省成都市書記)などである。
中央各部門でも、第七世代が主力となっている。知名度が高いのは、外交部副部長の華春瑩、民政部副部長の胡海峰(胡錦濤の息子)あたりだ。ただ、地方幹部に比べると、有望株が見えづらく、今後の展開はわからない。もっと若い幹部に目を向けると、現状1975年以降に生まれた幹部では、任維(チベット自治区政府常務副主席)をはじめとして、十数名が副省長や副部長レベルの任に就いていることが確認できる。1980年代生まれの「第八世代」では現在、省・部の一つ下のレベル、庁局級(市長など)に就いた者が十数人いるようだが、抜きん出た存在はいない。
目立つ企業出身者の台頭
上で紹介したような第七世代若手幹部の顕著な特徴として、企業出身者が多い。例えば、李雲沢、郭寧寧、劉強は銀行、劉捷、盧東亮、韋韜らは金属工業、楊晋柏と謝衛江は電力産業出身である。いずれも中国において伝統的に重要とされる産業である。もちろん、それ以外に末端の公務員からキャリアを始め、一歩一歩昇進を重ねてきた者も依然多い。
一連の若手幹部の昇進は、次の党大会を見据えてのことだろう。拙稿「前代未聞の政治局委員の役職交代」で石泰峰と李幹傑の役職交代について紹介したように、人事を司(つかさど)る中央組織部長の交代があったことも指摘しておく必要がある。現状この部長交代の影響は不明だが、若手幹部の昇進の活発化を誘引する可能性は否定できない。
*本稿は、霞山会発行『東亜』2025年9月号に掲載された記事を転載・加筆したものである。