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Commentary

習近平及びその時代をどう理解するか
2025年以降の政治的「地殻変動」に備えるために

天児慧
早稲田大学名誉教授、アジア共創塾塾長
政治
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中国の最高指導者であり続けている習近平を理解するには、まず〈習近平個人の政治的ビヘイビア〉を考える必要がある。写真は第19回中国共産党大会開幕式の終わりに、胡錦濤(左)と握手する習近平。右は江沢民。2017年10月18日。(共同通信社)
中国の最高指導者であり続けている習近平を理解するには、まず〈習近平個人の政治的ビヘイビア〉を考える必要がある。写真は第19回中国共産党大会開幕式の終わりに、胡錦濤(左)と握手する習近平。右は江沢民。2017年10月18日。(共同通信社)

台湾問題についてみるとここでも「民主」がキーワードになっている。すなわち蔣介石・蔣経国の独裁体制を打破し、民主主義体制を実現した今日の「民主台湾」は、共産党一党体制の大陸中国と本質的に対立する構図となっている。これに対して中国当局は、中国ナショナリズムの強調と台湾自身の歴史的、自立的な政治的経緯の軽視、とりわけ第二次世界大戦後の台湾における権威主義的独裁からの脱却の経験と1980年代半ば以降の民主化過程を全て無視している。

武力行使以外の台湾統一の方式として近年、社会経済の各種優遇政策による台湾人青年層の取り組み=恵台政策を推進し、台湾人青年の中国に対する帰属意識の涵養(かんよう)に重点が置かれている。さらには、福建省を主要舞台とする「両岸融合発展」を目指した経済、文化交流と人的往来の促進を通して一国二制度による「台湾の香港化、中国化」の推進が試みられている。しかし過去に言われていた台湾での独自の官僚機構と軍隊の保持がなくなり、「高度な自治」の範囲が狭められた。さらには長い時間をかけて徐々に台湾の人々の心に沈殿(ちんでん)し、蓄積されていった独自のアイデンティティ=台湾人意識が無視できないものになっている。したがって習近平が様々な硬軟交(まじ)えた手段で台湾を取り込もうとしても、けっして楽観できるような状況ではない。

国際社会の枠組みから中国を捉える

では変動する国際社会の枠組みから中国を捉えてみるとどのように見えてくるのか。米国の学術関係者は「米国の政治体制は約80年サイクルで変化し、2025年は新たなサイクルに入る」と指摘している(ジョージ・フリードマン等)。第一期が独立戦争(1775年~1783年)から南北戦争(1861~1865年)、第二期が南北戦争から第二次世界大戦の終わり(1945年)、そして第二次世界大戦が終わってから80年間が経過する2025年頃に第三期が終わる、という見解である。そして25年から始まる第2期トランプ政権は、米国第一主義を掲げて新しい第四期に突入するということになる。確かに、トランプ大統領の政策を見ると、①関税強化政策、②海外諸国や国際機関との非協力的姿勢、③移民の強制送還や国境への壁の建設のような外国人移民排斥運動など、歴史の歯車を逆回転させるような大きな歴史的転換を予感させる。バイデン政権末期に見られた、経済合理性に基づく日本企業による米国企業の買収に対する阻止行動は、トランプ政権にも引き継がれた。2025年は米国が保護主義・孤立主義に本格的に移行した記念碑的な年として歴史に名を残すかもしれない。

米国以外にも世界的な構造変化は多くある。一つは、他方で世界最大の人口大国となったインド経済の存在感が一層高まることが予想される。未来のフロンティアと言われているアフリカ諸国は、今後、コロナ前よりも成長率を高めると予想されているほか、21世紀を通じて人口が増加するとみられており、世界経済の中で一層注目を集める存在となる可能性がある。2025年は第三世界の集結を示したアジア・アフリカ会議(バンドン会議<1955 年>)から70年のメモリアルイヤーでもあり、これからの見通しとしてインドなどのグローバルサウスの影響力が高まっていく時代となろう。

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