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Commentary

不動産バブル崩壊のあとは生産能力過剰――中国が目指すべき「日本化」とは?

梶谷懐
神戸大学大学院経済学研究科教授
政治
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不動産市場が低迷している中国の危機には4つの側面がある。写真は貴州省貴陽市のマンション・西南上城。デベロッパーは碧桂園。2023年9月、高口康太撮影。
不動産市場が低迷している中国の危機には4つの側面がある。写真は貴州省貴陽市のマンション・西南上城。デベロッパーは碧桂園。2023年9月、高口康太氏撮影。

財政出動は解決策になり得るか

こうした金融政策だけでなく財政出動も必要ではないかという声もある。11月には財政部長が今後10兆元の地方特別債を発行して「隠れ債務」の処理に充てる方針を発表した。すなわち、これまで地方政府が融資プラットフォームを使って積み上げていた「隠れ債務」を地方債に置き換えるものである。それによって確かに地方政府の債務リスクは下がるが、直接景気を刺激する効果は大きくない。

景気回復をより強い流れにするためは、財政出動を増やして国有銀行に資本注入したり、地方特別債を用いて在庫となっている住宅を買い上げたり、貧困家庭に現金を給付したりすることが必要である。今後は、米国のトランプ新政権が打ち出すであろう高関税政策に対応するためにも、一層の財政支出が求められよう。

ただ、繰り返しになるが、これらの財政支出が、果たしてこれまでのように設備投資の拡大に向かうのか、それとも最終消費を刺激するのかどうかが重要な問題となる。これらが消費を刺激するのでなければ、過剰資本蓄積の問題に対する解決にはならない。たとえば、中国は迅速かつ大胆な金融緩和でコロナ禍に対応したが、財政出動には一貫して消極的であった。だが、不動産市場への規制によって債務の問題が企業と地方財政に重くのしかかるようになっている。不動産市場においては世代間資源移転を含む構造的な問題を背景として長期間にわたって「合理的バブル」が続いてきた。不動産が限界を迎えるなか、銀行融資が新興製造業に向かい、欧米との貿易摩擦を引き起こしている。

肝要なのは正しい「日本化」

こうした中国の状況は、日本のかつてのバブル経済と二つの点で大きく異なる。第一に、中国は供給能力が非常に優れている点だ。かつて日本国内の製造業が好調だった時代であっても、ある特定の産業が世界の需要量の2倍以上の生産能力を持つ、と言ったことは考えられなかった。他方で、政府が財政支出による高齢社会への備えという点では、中国は日本にはるかに及ばない。そのため、供給が過剰で需要が弱い状況がかつての日本よりも一層顕著であるのだと言える。この状況に対処するには安心して老後を迎えられる社会の構築が急務となっている。強い供給力を持つ中国はいたずらに「日本化」を恐れるのではなく、むしろその製造業の強みを生かしたまま、高齢社会への備えという点では正しく「日本化」すべきなのである。

(2024年12月8日の東京大学における講演に基づいて丸川知雄が記録をまとめた)

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