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Commentary

習近平の不安定な政権運営
不文律や慣習の打破で予測可能性と透明性が低下

李昊
東京大学大学院法学政治学研究科准教授、日本国際問題研究所研究員
政治
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 2024年7月、中国共産党第二十期中央委員会第三回全体会議(三中全会)が開かれた。三中全会は通常党大会翌年秋に開かれ、経済改革を議論する。しかし、2023年は政治スキャンダルが続出し、経済情勢も悪化する中、一向に三中全会開催の情報がなく、結局今年7月までずれ込んだ。公表された「決定」も期待はずれで、政権に停滞感が漂っている。
2024年7月、中国共産党第二十期中央委員会第三回全体会議(三中全会)が開かれた。三中全会は通常党大会翌年秋に開かれ、経済改革を議論する。しかし、2023年は政治スキャンダルが続出し、経済情勢も悪化する中、一向に三中全会開催の情報がなく、結局今年7月までずれ込んだ。公表された「決定」も期待はずれで、政権に停滞感が漂っている。

経済の停滞と国家安全偏重

今日の中国の最大の問題は、経済の停滞である。不動産市場の不況は深刻で、若年層の失業率は高止まりしている。2024年の国内総生産(GDP)成長率目標は5%前後とされ、公式的には概ねそれに近い成長率が達成されると思われるが、経済の足元の実態はきわめて厳しい。三中全会の延期も、そもそも経済政策をめぐる意見対立が原因であったとも言われる。

三中全会において採択された「さらなる改革の全面的深化、中国式現代化の推進に関する決定」は経済情勢の改善に効果的な対策を打ち出せているとは言い難く、国内外を失望させている(編集部:丸川知雄「改革が後退し、産業政策が前進した三中全会」もあわせて参照ください)。

そもそもタイトルからして「中国式現代化」を強調しているように、いわゆる「西側」の価値を拒絶するのが習近平政権の基本姿勢である。「決定」は総花(そうばな)的で、短期的な経済情勢の改善に関心があるようにも見えない。ただし、長期的課題に対する問題意識は見受けられる。税制改革は最も注目された点であり、中央政府から地方政府への税収再配分などが盛り込まれた。少子高齢化が進む中、社会保障費負担の増大を見据えて、債務が蓄積する地方政府の状況の改善を目指すものであると言える。党は、建国80周年である2029年までに「決定」の改革を完成させるとしているが、10年前の第十八期三中全会の「決定」もさほど実行されずに今日に至っており、今回の「決定」がどの程度実現するのかは、甚だ不透明である。

また、「発展と安全の統合」を重視することも「決定」に盛り込まれ、国家安全重視の姿勢は変わらず維持されている。発展と安全の統合とはいっても、実態は国家安全偏重であり、この姿勢が維持される限り、経済発展の重要な原動力である外資による投資は低調のままであろう。外資企業からすれば、従業員が突如拘束されるリスクが高まっており、投資を躊躇(ためら)わざるを得ない。しかし、習近平政権はこの経済活動と国家安全とのジレンマを解消する姿勢を見せていない。これまで中国経済を牽引(けんいん)してきた不動産市場の不況も、外資の投資控えも改善しない中、中国経済の停滞は継続するだろう。

四中全会は今年開催されるのか

中国共産党の規約では、毎年1回以上中央委員会全体会議を開催することが規定されている。通常、党大会の翌年には、春に国家機構人事を決める二中全会が、そしてその秋に経済改革を議論する三中全会が開催され、年に2回中央委員会全体会議が開かれる。しかし、今期指導部では、三中全会の開催が大幅に遅れ、2024年にずれ込んだ。そのため今年はすでに開催済みとなり、法規上四中全会を開く必要はない。従来、四中全会はガバナンスや党の建設を議論するのが通例である。結局、秋までに四中全会が開催される予兆はなく、年内開催の可能性は限りなく小さくなった。ならば、2025年春の開催はあるのか、あるいは秋に持ち越すのかも不明である。来年は、5カ年計画の採択という重要課題が控えている。もし今年四中全会を開かず、来年秋に持ち越すのであれば、第十四期指導部から継続してきた毎期7回の中央委員会全体会議を開くという慣習も打破されることとなる。

*本稿は、霞山会発行『東亜』2024年9月号に掲載された記事を転載・加筆したものである。

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