Commentary
共産党員になるのはどんな人か、党員になるメリットはあるのか
中国家計所得調査(CHIP)と中国総合社会調査(CGSS)から読み解く
もう1つ興味深い事実は、党員の若返りが学歴の比較的高い層で進行しているということである。図2もCGSS2003-21の関係情報を利用して作成したものであり、学歴別、入党年次別にみる入党時の平均年齢を表している。図1の全体的状況と比較して学歴別にみた入党年齢の様子がまるで異なることが見て取れる。
1985年までの30年間にわたり、高校以下も大専(3年制の大学専科の略称)以上もそれぞれの入党時平均年齢がほぼ同じような軌跡を辿(たど)ったが、1980代半ば以降の30年間に、学歴によって入党時の平均年齢に次第に開きが生じてきた。学歴の低い高校以下だと、入党時の平均年齢は経時的に緩やかな上昇傾向を見せる一方、大専以上の党員の入党年齢は逆に下がる傾向にある。例えば、1990年に、高校以下対大専以上の入党時平均年齢は33歳対29歳だったのに対し、2010年には37歳対27歳と両者間の開きが4歳から10歳に広がった。大学教育改革が開始された1999年以降、進学率が急上昇してきたのに加え、在校生を対象に入党勧誘が組織的に進められたことが大きな時代背景であろう。
入党の決定要因:誰が党員になりやすいか
中国共産党の党員になろうとする意思のない者は当然ながら党員にはなれない。一方、なりたいからといって誰でもなれるわけではない。家庭環境や時代背景から影響を受けて入党申請をした者は党組織の厳しい選考を経て、合格と認められて初めて党員になれる。では、どのような条件を満たしていたら入党可能になるのだろうか。
ここで、CGSSを2003-08年の4回の調査、2010-14年の5回の調査、2017-2021年の3回の調査をプールして、それをwave1、wave2、wave3と名付ける。そして、回答者が党員であるか否か(党員1、その他0)を被説明変数に、個人属性を表すジェンダー(男性1、女性0)、年齢(二乗も含む)、民族(漢族1、少数民族0)、婚姻(既婚1、その他0)、教育水準(小学校、中学校、高校、大専、大学以上)、および家庭環境を反映する両親の政治身分(党員1、その他0)、教育年数を説明変数とするLogisticモデルを構築し、本人の党員身分の達成に与えた各要素の影響を検証する。図3は推計結果から両親の党員身分・教育の子の入党への影響(オッズ比)、図4は本人の教育水準の入党への影響(同)を可視化したものである。なお、ほとんどの偏回帰係数が顕著に有意であることを付け加える。
都市と農村では、各要素の影響の度合いに差異が見られるものの、概ね以下のような特徴が指摘できる。都市では、①親が党員ではない人に比べて親が党員である人の方が入党する確率が顕著に高い。②母が党員である者の入党確率はそうでない者に比べ1.2-1.5倍高いが、父が党員である者の入党確率はそうでない者に比べ顕著に高く、しかも時間の経過と共に上昇する(3つの調査時期で順次1.7→1.8→1.9倍)、③親の教育年数の子の入党への影響はいずれの調査時期でも有意に観測されないか、1をわずかながら下回る(偏回帰係数が負の値となっている)。
農村では、①親の党員身分および教育年数の子の入党への影響は限定的である。②父が党員である者の入党確率はそうでない者に比べ顕著に高く、しかも影響の度合いが都市のそれを上回る一方、母が党員である場合、子の入党への影響はwave3で初めて有意となり、しかも、影響の度合いが最も高い。③親の教育年数が子の入党へ与える影響もほとんどの調査で有意な結果を見せておらず、都市の状況に似通っている。