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Commentary

農村へ浸透する共産党の支配

ベン・ヒルマン
オーストラリア国立大学准教授
政治
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2024年6月27日に、オーストラリア国立大学准教授のベン・ヒルマン氏が東京大学を訪問し、最新の中国農村調査に基づく報告を行った。写真は報告を行うヒルマン准教授(撮影者:李昊)
2024年6月27日に、オーストラリア国立大学准教授のベン・ヒルマン氏が東京大学を訪問し、最新の中国農村調査に基づく報告を行った。写真は報告を行うヒルマン准教授(撮影者:李昊)

村委書記を支えるために上級の党組織から派遣されてくるのが「駐村幹部」で、多くの場合「第一書記」というポジションに就いている。村民たちは第一書記にいろいろな資源を引っ張ってくることを期待する。もし発展改革委員会に勤務していた党員が第一書記として派遣されてくれば農民たちは大歓迎である。発展改革委員会は投資を認可する権限を持つ役所なので、そこから派遣されてくる幹部は投資プロジェクトを持ってきてくれるかもしれないからだ。一方、規律検査委員会に勤務していた党員が派遣されてくると村民は警戒する。

兼任のメリットとは

私は村で村委書記と村長を兼任している人たちにもインタビューしたが、彼らは両方を兼任するのは荷が重いとこぼしていた。すなわち党委員会として上から降りてくる指示や政策の精神を村民に伝達する任務を負うだけでなく、村長として村内のさまざまな問題の解決に当たらなくてはならない。彼らの多くは村委書記・村長としての仕事だけでなく、自分の事業を持っているので、一人で三役をこなさなくてはならず、その負担は大きい。1日24時間365日まったく休める時がない。その見返りとしてもらえる報酬は月4000~5000元(約8~11万円)程度で、今の中国ではまったく苦労に見合わない金額である。それも毎月くれるのではなく、年末に業績評価が行われて、それに基づいてまとめて支給されるのだ。

こんなに大変な仕事で報酬が少ないのであれば、今に誰もやりたがらなくなるのではないだろうか? 私はこの質問を地方の幹部たちに投げかけてみたが、一様に「心配ないよ。必ずやりたい人はいる」というのだった。しかし、5年に一回行われる村長選挙で、次期村長の候補者に名乗りを上げる人が本当にいるのだろうか。

村で大きな事業を営む人が村委書記や村長も兼任すると、村の政治的権力と経済的権力を一手に握る恐れがある。そこで共産党は村委主任になった人には自分の事業を手放すように指導をしている。また、村長が自分の事業として持っていた会社が村の発注する工事などを請け負ってはならないとする場合もある。ところが、実際には村長は単に社長の名義を自分の妻に書き換えただけということもある。共産党の支配が強まっても、村では「上に政策あれば下に対策あり」精神が健在だ。

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