Commentary
中国はロシアとどのように向き合っているのか
中露首脳会談と「5つの堅持」から見える距離感
国際政治における中露協力
第4の点に関しては、国連、APEC、G20などでの緊密な連携と多極化の推進が掲げられ、ここで習近平はロシアが今年BRICSの議長国に就任し、中国が来年上海協力機構(SCO)の議長国に就任することに直接言及している。議長国としての相互支持が言われ、またグローバル・サウスの団結も謳(うた)われている。
内容として代わり映えしないように見えるかもしれないが、中露首脳会談後の6月10日にBRICS外相会合が開催された。それにあわせて行われた中露外相会談で、王毅は、中国はロシアのBRICS議長国としての取り組みを全力で支援し、グローバル・サウスの連合を促すとしている(注9)。こうした具体的行動を見ると、中露関係はただの二国間関係ではなく、グローバル・サウスと密接な関係を持っていることがわかる。
第5の点に関しては、習近平の説明ではパレスチナ問題とウクライナ危機(中国語原文で危機とされている)が挙げられる。特に後者(ウクライナ問題)については多くの言及があり、政治解決が正確な方向性であると中露双方とも認識していること、中国の立場は一貫しており、各国の主権、領土的一体性を尊重し、各当事者の正当な安全保障上の懸念を尊重し、バランスの取れた効果的かつ持続可能な新たな安全保障体制を構築することが指摘された。
第5の点もまた、これまで繰り返し言われてきたことのように見えるが、習近平の言う政治解決が、事実上、ロシアに寄り添ったものであることは、その後にスイスで開かれた平和サミットへの中国の欠席に示されている。中国外交部は平和サミットへの欠席について、「ロシアとウクライナの双方が認める、各国が対等に参加する、すべての和平案が公平に議論される」の三要素が満たされるべきであるところ、実現していないからだと説明した(注10)。平和サミット欠席の方針について、首脳会談時にプーチンと習近平のあいだで、直接の確認があったと推察される。
プーチンは北京に支援を求めにいったのか
中露首脳会談に際し、窮地にあるプーチンが中国側に支援を求めに行ったかのような評論が世界のさまざまなメディアで流された。これが当事者の考えと異なることは、プーチンの発言が示している。中露首脳会談においてプーチンは、「昨年3月、習近平主席も国家主席再任後間もなくロシアを国賓として訪問した」としたうえで、「これは我々両国の友好の伝統であり、双方が新時代の露中全面戦略協力パートナーシップの強化を高度に重視していることを示している」と述べている(注11)。
確かに習近平も国家主席再任後の2023年3月にロシアを訪れており、今回の中露首脳会談もまた、中露間で首脳の相互訪問が重視されていることの表れとみられ、必ずしも俗に言うように、プーチンが援助を求めにいったということではない。しかしここで指摘したいのは、単に首脳の往来が活発で、また双方向的であるということではない。中国側もまたプーチンと長期的に戦略協力を行っていくことに前向きなのである。