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Commentary

清華大学と中国経済に関する討論会を開催
五つのセッションで活発な議論を展開

丸川知雄
東京大学社会科学研究所教授
経済
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日本の中国専門家は日中共同繁栄の現状を広く伝えることを通じて日中関係の安定化に貢献していく必要がある。写真は討論会での集合写真。2026年1月11日(著者提供)
日本の中国専門家は日中共同繁栄の現状を広く伝えることを通じて日中関係の安定化に貢献していく必要がある。写真は討論会での集合写真。2026年1月11日(著者提供)

第3セッション――不動産市場

第3セッションは不動産市場をテーマとした。まず私(丸川知雄)から「中国の都市発展の現状をどうみるか:日本との比較」と題し、不動産バブル崩壊に苦しむ中国の現状と戦後日本の都市発展との比較を行った。人口の都市化率を見ると、中国の都市発展の現状は1990年、つまりバブルのピーク時の日本よりもむしろ1960年代の日本と同水準である。実際、広州市や深圳市の現状は他地域から労働力が流入して過密に悩んでいた1960年代の東京や大阪と似ている。この2都市では今後、人口が都心部から郊外へよりよい住環境を求めて移転していく日本の1970年代、80年代のような発展が見込める。一方、北京市と上海市は戸籍制度と高い生活費のゆえに人口の純流入が過去10年余り止まっている。人口はすでに都心部から郊外へ移動しており、このままだと遠からず住宅需要の飽和に至る。この2都市は人為的な流入制限を緩和してもっと多くの流入人口を吸収すべきであろう。

周紹傑氏(清華大学国情研究院院長・教授)からは「中国の不動産市場の調整、影響、展望」と題する報告が行われた。中国の不動産業は1998年から市場化が始まり、2003~2011年は急速な拡張と最初の調整、2012~2022年は調整と刺激を繰り返し、2022年からは下降線にある。不動産投資がGDPの成長に対してマイナスの影響を与えている。住宅購入者によるローン返済が滞り、銀行による住宅の差し押さえが増えている。売れ残り不動産の面積は2024年には全国で7億㎡にも達した。ただ、中国は鎮(小都市)の人口が都市人口に発展していく可能性がある。また、不動産サービス業は未発達である。

第4セッション――人口高齢化と経済成長

第4セッションは人口高齢化と経済成長をテーマとした。岡本信広氏(大東文化大学国際関係学部教授)から「中国の人口転換と経済成長のダイナミクス」と題する報告が行われた。中国は1982年から2010年代初めまで人口ボーナスを享受し、労働力の減少は2017年以降になって表れた。一方、高齢化のもとでの貯蓄率の増加と人的資本の向上という第二の人口ボーナスを模索する段階にある。都市化によって集積の経済を実現できれば高齢化によるマイナスの影響を緩和できる。また、社会保障制度の不全は第二の人口ボーナスの獲得を妨げるので制度の改善が必要である。

劉生龍氏(清華大学公共管理学院教授)は「中国の人口高齢化と高齢産業の潜在力」と題する報告が行われた。中国では2000年に8人で1人の高齢者を養う構造だったのが、2050年には2人で1人の高齢者を養う構造になる。高齢者人口比率が7%から14%に上昇するのに日本では27年かかったが、中国は22年しかかからず、急速に高齢化が進んでいる。ただ、見方を変えれば中国ではこれから高齢産業の急成長が見込める。高齢者の消費は2024年には7.3兆元でGDPの5.4%だったが、2030年にはGDPの10%にあたる24.4兆元へ拡大するだろう。健康管理や医療・介護に加え、高齢者向けの観光業やサービス業も伸びる可能性がある。

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