Commentary
中国のコンテンツ産業の発展と近年の特徴
文化・関連産業の中で高まる比重

おわりに
韓国や日本に続いて中国も明確にコンテンツ産業育成政策を採るに至った。それは産業的な意味とソフトパワー育成の両方の意味を持っている。包括的な育成・支援政策(とくにアニメ産業)により中国のコンテンツ産業は量的も質的も大きく進歩を遂げた。
中国のコンテンツ産業は文化・関連産業の中核的地位を担うようになり、市場や投資を牽引している。ただし、バリューチェーンが国際的に展開しているにもかかわらず、基本的な投資回収モデルは国内的に完結することが多い。最近の中国コンテンツ産業の特徴として①大規模回収モデルの成立、②オンライン配信の比重増と多様な回収モデル、③グローバル・バリュー・チェーンの展開と国内回収構造のさらなる展開、④正規化の流れ、⑤グッズブーム、二次創作品ブームがある。
以上のように、中国のコンテンツ産業は「ワンソース・マルチユース」のビジネスモデルを、日本よりもはるかに大きな国内市場を基盤に発展させてきている。ただし、中国のコンテンツ企業はその製作にあたって、日本のような製作委員会方式は採らずに、すべて自社グループ内でカバーする傾向が強い。これが迅速な意思決定や利益の集中という点でプラスとなるのか、それともリスクヘッジや事業の広がりという点でマイナスとなるのかは今後の検討課題である。また、国際的な広がりという点は今後の実践的課題であり検討課題でもある。大きな国内市場を持ち、そこだけで大規模投資・大規模回収が成り立つというのは大きなメリットではあるが、さらに国際的な広がりを持たそうとすれば、題材の選び方、配給チャネルのさらなる開拓なども大きな検討課題となってこよう。
参考文献
日本語
青崎智行・財団法人デジタルコンテンツ協会(2007)『コンテンツビジネスin中国』翔泳社
中川涼司(2010)「中国におけるオンライン・デジタルコンテンツ・ビジネスと『頭脳還流』・『クリエイティブ・クラス』」(関下稔・中川涼司編『知識資本の国際政治経済学―知財・情報・ビジネスモデルのグローバルダイナミズム-』同友館、所収)、183-212ページ
———-(2019) 「ゴジラと日本映画産業」池田淑子編著『アメリカ人の見たゴジラ、日本人の見たゴジラ―Nuclear Monsters Transcending Borders』大阪大学出版会、120-149ページ
———-(2021a)「文化強国を目指す中国―ソフトパワー重視と文化産業振興―」『日中経協ジャーナル』2021年3月号、6-9ページ、
———-(2021b)「大連万達集団(ワンダ・グループ)の国際展開とレジェンダリー社買収の意味 : 中国文化産業多国籍企業の発展」『立命館国際研究』第34巻第2号、1-33ページ
———-(2023)「中国アニメ企業のビジネスモデルと国際展開―テンセント/絵夢(えもん)と追星動漫を中心に―」『立命館国際地域研究』第56号、1-26ページ
———-(2025a) 「ゴジラとGodzilla―日米並行制作体制の行方」池田淑子編著『ゴジラは自然の逆襲か?―Global Monsters Beckoning the Future』大阪大学出版会、128-156ページ
日本貿易振興機構(ジェトロ)上海事務所(2024)「2023年度日系コンテンツ企業の中国ビジネス展開報告書」https://www.jetro.go.jp/ext_images/jetro/overseas/cn_shanghai/report/20240331_r.pdf
藤田美季(2025)「中国アニメ産業におけるネットアニメのビジネスモデル-テンセントのプラットフォーム分析を中心に-」『中国経済経営研究』第9巻第2号
中国語
国家統計局社会科技和文化産業統計司、中宣部文化改革発展局編(2024) 『中国文化及相関産業統計年鑑2024』中国統計出版社
中国社会科学院財経戦略研究院、李勇堅主編(2024)『中国潮玩与動漫産業発展報告(2024)』社会科学文献出版社