Commentary
中国のコンテンツ産業の発展と近年の特徴
文化・関連産業の中で高まる比重

中国も文化産業、コンテンツ産業の体系的な育成に乗り出している。
第10次五カ年計画(2001〜2005年)で、五カ年計画にはじめて「文化産業」という言葉が規定され、文化部によって文化産業体系も定義された。文化が思想建設ということだけではなく、産業としてもとらえられるようになったということである。第11次五カ年計画(2006〜2010年)では中国の大国化と対外関係の変化を反映し、ジョセフ・ナイのソフトパワー概念を採りいれた文化ソフトパワー(「文化軟実力」)概念が明確に位置付けられた。
これらの下で、体系的な文化産業振興政策である 「文化産業振興計画」(2009年)が制定された。同計画では「文化産業を国民経済の新たな成長点へと育成・発展させる」ために、①文化市場主体の整備、②文化産業構造の改善、③文化創新(イノベーション)の能力向上、④現代文化、市場体系の整備、⑤文化製品とサービス輸出の拡大の5つの計画目標が定められた。第14次五カ年計画(2021〜2025年)の第9項は「文化事業と文化産業を繁栄・発展させ、国家の文化ソフトパワーを引き上げる」というものであり、また、2035年までの目標として「文化強国」となることが明確化された。
中国のコンテンツ産業の発展
中国語でコンテンツ産業は「内容産業」であるが、中国の公的な産業統計の基準である国民経済行業分類において「内容産業」という分類はない。日本で発行されている『デジタルコンテンツ白書』は諸外国の動向として中国の紹介をしているが、映画、ゲーム、動画配信を個別に紹介しているのみで、体系的にコンテンツ産業のデータは提供していない。
上記のように中国は文化産業を政策的に育成してくために2004年に「文化および関連産業分類」(「文化及相関産業分類」)を策定・公表し、それは2012年に「文化および関連産業分類(2012)」、さらに2018年には「文化および関連産業分類(2018)」が策定され、また、それに従い、国家統計局社会科技和文化産業統計司・中宣部文化改革発展局編『中国文化及相関産業統計年鑑』も発行されるに至っている。
これらをもとに、中国のコンテンツ産業についてもっとも包括的にデータ分析を行ったのがJETRO上海の一連の報告である。ただし、レポートという性格上、「映画」、「動画配信」、「アニメ」、「商品化」、「音楽」、「書籍」について各業界について詳細なレポートがされる一方で、コンテンツ産業の定義やマクロ的な意味については立ち入った吟味はしておらず、マクロデータは「文化及関連産業」の付加価値額の紹介や定義が不明のリサーチ機関のレポートの紹介に留まっている。また、日本企業が中国コンテンツ市場に進出するにあたっての必要な情報を提供するのが目的であるため中国コンテンツ企業のビジネスモデルなどの紹介は乏しい。