Commentary
中国における自動運転
主な企業と乗車体験

自動運転バス(ロボバス)は、宇通集団および厦門金龍が製造する小型バスに自動運転システムを搭載し、中国の25都市、シンガポール、フランス、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、カタールで運行している。2024年10月時点で300台余りのロボバスが運行中であるという。乗客定員が少ないので、景観地区やリゾートなど狭い地域での運行に使われている(路 2025)。
自動運転輸送車(ロボバン)は江鈴汽車の車両に自動運転システムを装備したものである。中国の宅配業者である中通快逓(ZTO)と提携しており、ZTOはロボバンの商業生産が始まれば採用する見込みだという。
自動運転清掃車(ロボスイーパー)はレベル4の自動運転により道路清掃を行う車両であり、車両は宇通集団が提供する。北京市、鄭州市、広州市、東莞市、汕頭市などでロボスイーパーが運用されている。
文遠知行も小馬智行と同様に赤字経営をまだ脱しておらず、2023年には研究開発支出が10.6億元だったのに対して売り上げは4.0億元だった。
大連での乗車体験
私は2024年8月29日に大連で、文遠知行の子会社である大連文遠知行智能科技有限公司が運営する自動運転バスに乗車した。バスなので各停留所に来る時間は定められており、乗車希望者はスマホのアプリを通じて何時何分のバスに乗るのか予約する必要がある。バスには安全員が一人乗車しているが、彼の役割は乗客にシートベルト装着を促すなど車内の安全管理であり、運転はしない。実は筆者らは予約したバスの出発時間に数分遅刻したのだが、安全員の配慮により、出発時間を遅らせてくれた。
車内には安全員の他には乗客が8人しか乗れない。大連で走行したのは高級マンションが立ち並ぶ東港地区を一周するルートで、途中には地下鉄の駅もあるので、日常の移動の手段として使っている乗客もいた。大連市内では経済技術開発区にももう1路線ある。
私が乗ったバスが通る地域は新興開発地域で、道路は広く、交通量は少なく、自動運転車には優しい走行環境であった。バスなので最高速度は40km/hに制限されており、それ以上のスピードは出さない。写真3に見るように、ロボバスの前方の左右にはライダー(LiDAR。レーザー光線を使ったレーダー)が装着されているが、前方の様子は主にカメラで捉えて判断している。ロボバスはバス停に順次停車して路線を一周し、途中で急ブレーキをかけることはなかった。乗車時間は15分程度と短かったが、とくに不自然な動きも危ない動きもなく、安全に目的地に着いた。

自動運転の難敵・違法駐車
ただ、そうした環境であっても、ロボバスにとって必ずしも甘くない状況がある。それは違法駐車の横行である。大連市では駐車禁止や駐停車禁止の場所であっても歩道寄りの車線が違法駐車の車によって占拠されていることが多く、歩道上に乗り上げて停められている車も多い。大連市民によれば、仮に違法駐車が見つかっても罰金が100元程度と低額であるため、駐車料金を節約する目的で違法駐車をする車が後を絶たないそうである。そうした状況は高級マンションが立ち並ぶ東港地区でも同様であった。自動運転車はそうした交通法規とは異なる現実に対処する必要がある。