Commentary
中国における自動運転
主な企業と乗車体験

私たちは安亭駅から嘉定新城駅までの約15キロメートル乗車したが、乗車したのが夕方で交通量が多かったため、所要時間は50分ほどであった。まだ本格的な営業運転は始まっていないものの、サービスはすでに有料であり、我々の乗った距離であれば30元以上の料金が発生する。ただし、同行した知人にとって「蘿蔔快跑」を利用するのは初めてだったため、初回料金ということでタダであった。乗車した地域には上海フォルクスワーゲンの工場があり、自動車部品を組み立て工場に運ぶトラックや、出来上がった車を輸送するトラックが行きかい、かつ退勤ラッシュでもあったため、北京市で小馬智行の自動運転車を体験した時よりも交通量がはるかに多く、かつ複雑であった。
自動運転車は制限速度が60km/hの幹線道路を走ったが、スピードが出せる箇所では60km/hまで速度を上げた。交通量の多い一般道路であったため、自動運転車にとってはなかなか厳しい走行環境であった。ある時は車の右奥から目の前へ電動バイクが飛び出してきた。右側の脇道からやや無理なタイミングで車が出てきて左側の対向車線に入ったこともあった。対向車線の車が左折しようとしていて、車体の一部が、ロボタクシーが走行する車線に少しはみ出ている場面もあった。こうしたチャレンジングな走行環境に対して、ロボタクシーはいずれも適切に対応した。電動バイクが飛び出した時は強くブレーキをかけ、脇道から出てきた車に対してはパッシング(前照灯を上向きにパチパチと点滅させて警告すること)をした。対向車のはみ出しに対して、自動運転車は少し右側による回避動作をしたが、北京の小馬智行の車に比べて小さめの動作であった。また、交通量の多い片側二車線の道路で、自動運転車は相対的に空(す)いている車線への車線変更を行い、より速く目的地に到達する努力をした。以上の動作はほぼすべて自動運転車が自律的に行ったものだと思うが、運転席で安全員が実際に何をしているのか私の位置から確認できなかったので、本当のところはよくわからない。
拙さが目立った場面も
一般のドライバーが運転するのに比べて運転が拙(つたな)い場面もいくつかあった。たとえば、百度の自動運転車は、車線変更は余り得意ではないようで、動きがぎくしゃくしており、入っていこうとする車線の後続車からクラクションを鳴らされることもあった。
中国の交通規則では、交差点で前方の信号が赤の場合でも、交差する方向の車や人の通行を妨げないという条件で右折(日本でいうと左折)することが許されている(道路交通安全法実施条例第38条)。実際、幹線道路と幹線道路が交わる交差点で自動運転車は赤信号で右折しようとした。ところが、交差方向の道路の交通量が多めだったので、車はなかなか右折のタイミングがつかめなかった。交差する道路の側では、スピードが速い乗用車が先に行った後、スピードが遅いトラックがやってきた。もしロボタクシーが右折を敢行すれば、安全に右折することができるように思えた。
実際、自動運転車は少し動いたのだが、すぐに止まってしまい、トラックが行き過ぎるのを待った。その次も遅いトラックが来たが、ロボタクシーは再び行こうとして止まり、結局右折できたのは最後の車が行った後であった。このあたりの動作は、ゲーム理論を使い、自分の行動によって相手に意図を知らせる小馬智行のロボタクシーであればもっと上手にこなせるのではないだろうか。