Commentary
中国における自動運転
主な企業と乗車体験

中国では今年(2025年)のうちにも自動運転タクシーや自動運転バスの営業運転が始まりそうだ。中国で自動運転の実証実験を行っている企業は30社以上あるとみられるが、ここでは私が2024年1月から11月にかけて中国の各都市で走行の現状を見たり、乗車を体験したりした3社の状況を紹介したい。
1.北京――小馬智行の自動運転車
小馬智行(Pony AI)の概要
小馬智行(Pony AI)は2016年に百度(Baidu)のエンジニアだった彭軍と楼天城によって創立された新興企業である。同社は2018年12月から自動運転タクシー(ロボタクシー)の実証実験を始めた。2020年にトヨタ自動車と第一汽車からの出資を受け、一定の条件下での完全自動運転を意味する「レベル4」の自動運転を運営する独立の企業としては中国最大である。ただ、ハイテクベンチャーの御多分に漏れず、赤字経営が続いており、2023年は8.8億元の研究開発支出に対して売上高は5.1億元にすぎなかった。
小馬智行は現在、広州・北京・上海・深圳で250台のロボタクシーを運行しており、1台あたり一日に15回の乗車があるという(『21世紀経済報道』2024年10月22日)。同社のシステムが搭載されているのはトヨタ(レクサス)車の他、中国メーカーの上海汽車、第一汽車、広州汽車の自動車である。2025年には北京汽車集団の「アルファT5」に小馬智行の自動運転システムを搭載した車が発売され、北京のロボタクシーとして投入される見込みである。
小馬智行はこの他、大手トラック・建機メーカーの三一重工とレベル2(ドライバーの監視のもと、特定の条件下で自動運転する)からレベル4の自動運転ができるロボトラックを共同で開発した。目下190台の自動運転トラックを運営し、うち160台は中国外運という運輸会社との合弁企業において運送業務を行っている。小馬智行は海外での事業展開にも取り組み始めており、2024年3月にはルクセンブルク政府と意向書を交わした。今後、ルクセンブルクを足場としてヨーロッパでの自動運転の展開を目指している。また、韓国に合弁企業を設立し、サウジアラビアとアラブ首長国連邦での事業も進めているという(Pony AI 2024)。
北京での乗車体験
私は2024年1月22日に北京市で、小馬智行のシステムをレクサス車に搭載した自動運転車に試乗する機会を得た。車の運転席には誰も座らず、助手席には自動運転実験区の副主任が同乗した。15分程度の乗車中、彼はもっぱら後部座席に座る私たちの方を向いておしゃべりを続け、自動運転の安全性に対して全幅の信頼を置いていた。彼の説明によれば、私たちが乗った車およびシステムの価格はそれぞれ70万元(約1400万円)ということで、なかなか高価なシステムである。
車は北京市郊外にある亦荘工業団地内の一般道路を走った。道路幅は広かったものの、路上にはジョギングする人や自転車もいて、自動運転車にとって必ずしも運転しやすい道路環境とはいえない。そうしたなかを自動運転車は安全かつ最高速度60km/hで走行した。