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Commentary

改革が後退し、産業政策が前進した三中全会
2013年以前の状態に戻った国有企業改革

丸川知雄
東京大学社会科学研究所教授
経済
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2024年7月15日から18日まで、中国共産党の第20期中央委員会の第3回総会(三中全会)が北京で開催された。写真は三中全会に関する記者会見の模様。2024年7月19日(共同通信社)
2024年7月15日から18日まで、中国共産党の第20期中央委員会の第3回総会(三中全会)が北京で開催された。写真は三中全会に関する記者会見の模様。2024年7月19日(共同通信社)

2013年の三中全会における「画期的な方針」の第三は、「国有資本の収益を公共財政に上納する比率を2020年には30%にまで引き上げ、(国有企業の収益を)より多く(社会)保障と民生の改善に用いる」というものである。電気通信業、航空運輸業、石油・天然ガス、タバコなど収益性が高い産業において国有企業は独占的ないし支配的な位置を占め、莫大な利益を上げている。そうした独占的な利益を国有企業の間で浪費するのではなく、国家財政を通じて国民全体の福祉のために還元するべきである、というのは当然の要求であろう。

ところが、国有企業の利益の大部分は企業に内部留保され、配当として国有資本経営会計に上納された金もその半分ぐらいは経営状況の悪い国有企業の赤字の穴埋めのために使われてしまっている。結局、国有企業が上げた利益のうち国家財政の一般会計に繰り入れられている割合は筆者の計算では2020年に5.1%にとどまり、30%という目標にはまったく届いていない。しかし、2024年の三中全会の決定は目標を達成できなかったと反省するどころか、この目標自体をなかったことにしてしまっている。

そうなると、国有企業の膨大な利益は国有企業の支配力拡大のためにのみ用いられ、国民には還元しないということになりかねない。

以上のように、2024年の三中全会の決定においては、2013年の三中全会で打ち出された国有企業改革に関する三つの画期的方針がすべて消えた。いちおう中国共産党の名誉のために言っておけば、2013年の三中全会の決定に書かれていた市場経済化の原則は2024年の決定にも残っている。すなわち、第一に「資源配分において市場に決定的な役割を果たさせること」、第二に「決してブレることなく公有制経済を強固にし、発展させ、決してブレることなく非公有制経済の発展を奨励、支援、誘導すること」という2点の原則的な表現は、2013年の決定と寸分の変更もなく維持された。

第二の点については、これは形ばかりの両論併記であって、中国共産党の本音は国有企業を拡大して民営企業を抑えつけることだと見る向きも多い。実際、2020年秋から2022年までそのような方向に政策の針が大きく振れた。ただ、筆者はこの動きは改革派の政治指導者を追い落とすための政治闘争だったのではないかと思う。2022年秋の共産党大会で李克強と汪洋の早期引退という形で政治闘争の決着がつくや否や、政策の針は再び中間に戻り、民営企業の参入を促進する政策が強調されるようになった。このたびの三中全会の決定でも、国有企業と民営企業をともに盛り立てていくという方針が確認されたのだと思う。

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