Commentary
改革が後退し、産業政策が前進した三中全会
2013年以前の状態に戻った国有企業改革
ところが3年が経過して、「国有企業改革三年行動」の結果を総括する段階になると、混合所有制企業への改革という課題はきれいさっぱり忘れられ、まるでそんな課題などなかったかのように、「目標と任務が達成された」と総括された(『経済参考報』2023年2月1日)。いったい何を「達成」したのか。より詳しい報道によれば、3万8000社の国有企業で取締役会を設置した、経営陣の任期制を実施した、大型国有企業どうしの合併を推進した(中化集団と中国化工、中国電科と中国普天、鞍山鋼鉄と本渓鋼鉄、山東能源と兖鉱集団など)、国有企業の主業ではない事業や優位性のない事業からの撤退を進めた、というのが3年間に達成された「成果」だという(『経済参考報』2023年2月10日)。なお、ここに挙げられた「成果」のうち、鞍山鋼鉄と本渓鋼鉄は実は2005年に一度合併して「鞍本集団」となったが、2011年に袂(たもと)を分かっている。つまり、一度無理やり結婚させたカップルが不仲のため離婚したのを再び無理やり結婚させたわけである。総じて、改革の「成果」なるものはどれも効果が疑わしい表面的な変化にすぎない。
2013年の三中全会における「画期的な方針」の第二は、国有資本運営会社を組織し、また、条件のある国有企業を国有資本投資会社に改組するというものである。後者で書かれていることを深読みすれば、例えば鞍山鋼鉄が鉄鋼業でいつまでも泣かず飛ばずなのであれば、鉄鋼業に関わる全資産を売却して現金に変え、将来性のある事業に投資する投資会社に転換してもよい、ということを意味する。
この面での変革は、実はこの10年余りの間にけっこう進展した。特に地方政府が傘下に投資会社を組織し、成長する見込みの高い産業に活発に投資をしている。投資先の企業は民営企業であるケースも多い。中国企業が近年液晶産業や電気自動車産業で大きな躍進を遂げた背景には、地方政府傘下の投資会社による資金面での後押しがある。成果が上がっているこのモデルを中央政府傘下の国有企業にも応用し、鉄鋼業のように国有企業がジリ貧の産業から退出する代わりに資産売却によって得た資金を元手に投資会社を作るというのはなかなか良いアイディアであると思う。タバコ産業の独占企業である中国煙草総公司が国家IC投資ファンドに巨額の出資をしているのも、儲かりはするが将来性はないタバコ産業から国家が資本を引き揚げ、将来性のある産業に投資する動きだと見られる。
2024年の三中全会の決定においても、「国有資本投資会社、運営会社の改革を深化する」と書いているので、これまでの方針を変えたわけではない。しかし、「条件のある国有企業を改組する」という一言が削除されている。つまり、国有企業の退出と投資会社の設立とをセットにするという2013年の決定の重要な側面が抜け落ちている。やはり改革は一歩後退したと言わざるを得ない。