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Commentary

地方の苦境が招く中国「債務膨張」に漂う暗雲
政府債務残高の対GDP比は2028年に142.6%増の予想

藤井大輔
大阪経済大学経済学部講師
経済
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地方政府の債務問題が各所で懸念されている。一部の地方では、財政資金不足によりインフラ建設や公共交通サービスが停止される事例も出てきた(写真:共同通信IMAGE LINK)
IMFは地方政府融資平台(LGFV)などを含む広義の中国政府債務残高の対GDP比は2023年時点で116.2%、2028年になると142.6%まで増加すると予想している(写真:共同通信IMAGE LINK)

当然ながら、地方政府間競争に勝ち抜くための公共投資を行うためには財源が必要である。しかし、前述のとおり、地方本体の財政は構造的な赤字状態にある。そこで、地方政府は、税収以外の手段を駆使して資金調達を行っている。その代表的なものが現在、問題となっているLGFVである。

LGFVは地方政府本体の正規の予算ではないが、地方政府が公共投資を行うために利用しているスキームである。2014年までの旧予算法の下では、地方政府は原則、地方債を発行することができなかった。そこで、地方政府は出資と債務保証を行い、公共投資を行うための主体としてLGFV企業を設立した。LGFV企業は、地方政府本体ではなく、地方政府所有の国有企業という扱いになるので、政府本体に対して適用される予算法の対象外となる。LGFV企業は、地方政府に代わって、城投債と呼ばれる債券を発行したり金融機関などから融資を受けたりして資金調達を行い、公共投資を行ってきた。

リーマンショック直後こそは、中央政府からLGFVに対して景気対策の手段としてポジティブな評価が与えられていたが、2010年代に入ったあたりからLGFV企業による責任関係があいまいな債務に懸念がもたれるようになった。以降、国務院、審計署、旧中国銀行業監督管理委員会など中央政府の各部門がたびたびLGFVの整理を求める通知や意見などを出すようになった。2015年の予算法改正による地方債の解禁も曖昧なLGFVからの透明化の狙いがあった。しかし、自身の昇進のために積極的な財政支出を行う地方官僚のインセンティブ構造を変えることなく、LGFVを含めた地方政府の債務リスクを解消することは可能だろうか。

LGFV債務の整理が進んでいない

LGFV債務の整理に関して、2015年から2018年まではLGFVによる債務を置き換えるための地方債が発行された。また、2020年からもLGFV債務を置き換えるための特別再融資債券と呼ばれる同様の地方債が発行されている。LGFV企業よりも地方政府のほうが信用力は高いので一般的には地方債の利率は城投債の利率よりも低い。しかし、本稿を執筆している2024年2月現在まで城投債によるLGFV企業の資金調達も継続しており、債務は整理されるどころか、かえって増加している。

Bloombergによると、月次ベースで最も城投債の起債が多かったのは2023年2月の8000億元であった。2023年8月にも過去3番目の額となる6200億元が起債された(Bloomberg 2023年9月20日)。21世紀経済報道によると、2023年9月以降は、月次での城投資の起債は減少している(21世紀経済報道 2023年12月20日)とのことだ。しかし、前出のBloombergに掲載されている月次データによると、これまでにも年末に向けての数カ月で起債額が連続して減少したのちに翌年3月あたりに増加に転じるということがたびたびあった。したがって、このまま城投債の起債が減少していくか現時点で判断するのは時期尚早かもしれない。

また、LGFV企業が規制の裏をかくような姿勢もみられる。その1つの例として、外貨建てのオフショア城投債が挙げられる。国家発展改革委員会は2023年2月に365日以上の中長期のオフショア債の起債には当局の承認を得なければならないという規制を課した。すると、規制の対象外となる364日物のオフショア城投債の起債が相次ぐようになった。結局、2024年に入ってから364日より短いオフショア城投債にも規制が入った(Reuters 2004年1月8日)。このようにLGFV企業は規制をかいくぐって、何とかして資金調達をしようとしている。広義の地方債務を整理するためには、まずはしっかりとLGFVによる債務の整理を行うべきである。

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