Commentary
世界人工知能大会(WAIC)でみた中国AIの現状
実用化へ邁進する技術開発

2025年7月26日~7月28日に上海で「世界人工知能大会」が開かれ、会場には3日間にのべ30万5000人の参観者が詰めかけた。大会では145の分科会が開催され、人工知能(AI)のさまざまな応用事例についての紹介があったほか、広大な展示場に827の企業や団体が出展して、AIを利用した自社の最新技術を紹介した。
中国のAI実用化技術お披露目の場として
ヒト型ロボットの競演
AIというと、ChatGPTのようなオンラインで利用するソフトウェアを想像しがちであるが、自動車の自動運転、各種のロボット、ビルに入る時の顔認証システムなど、さまざまなハードウェアにもAIは搭載されている。展示会場で最も来場者の人気を集めていたのも、ヒト型ロボットなどさわれるものであった。
例えば、展示会場を入ってすぐ前の目立つ場所にはヒト型ロボットが働くお店や工場があり、銀河通用(Galbot)や擎朗智能(Keenon Robotics)のヒト型ロボットが客の注文に応じて飲料を出したり、ポップコーンを作ったりしていた(写真1)。

ヒト型ロボットのなかでも特に参観者たちを驚かせたのが、宇樹科技(Unitree)のG1-boxingである。「彼」はプロボクサーのように肩をいからせて入場し、ボクシングの動作をして見せたが、その動きがとても滑らかだった(写真2)。

また、四つ足で歩く犬型ロボットを数社の中国メーカーが展示していた。なかでも杭州雲深処科技(DEEP Robotics)の犬型ロボットは立ち上がったり(写真3)、とんぼ返りをしたりして来場客を驚かせていた。

ただ、ヒト型ロボットにしても犬型ロボットにしても、何社もの出展者が似たような形や機能のロボットを開発しているのは気になった。いま中国で最も流行している言葉は「巻(juan)」であり、これは国内企業どうし、あるいは似たような経歴の人たち(例えば大学生)の間で激しい競争が起きている状態を指すが、ヒト型・犬型ロボットなど、作ってもまだなかなか利益が上がりにくい業界でも早くも「巻」が起きている。