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Commentary

香港サッカー親善試合「メッシ欠場騒動」のなぜ
香港の政治状況に対する「静かな抗議」だったのか

銭俊華
東京大学大学院総合文化研究科博士課程
社会・文化
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2月7日、日本のヴィッセル神戸との親善試合でプレーするメッシ。その3日前の香港での試合は欠場していた(写真=東京・国立競技場、共同通信IMAGE LINK)
2月7日、日本のヴィッセル神戸との親善試合でプレーするメッシ。その3日前の香港での試合は欠場していた(写真=東京・国立競技場、共同通信IMAGE LINK)

 香港文化体育観光局の楊局長によれば、タトラー・アジアがメッシの欠場を確認し政府に伝えたのは、試合の後半である。なぜそこまでギリギリの時点になったのか。『TVB News』はインテル・マイアミに問い合わせたところ、メッシとスアレスが出場できる可能性を最後まで模索していた、という旨の回答だったという。

 メッシの不調や欠場の可能性は以前から伝わっていた。1月13日の『on.cc東網』は「契約はメッシのプレーを保証するものではない」と報じていた。2月1日、インテル・マイアミがサウジアラビアでアルナスルと対戦した際、メッシは最後の7分しかプレーしていなかった。2月2日の『大公文匯網』によれば、インテル・マイアミのヘラルド・マルティーノ監督は香港での記者会見で「メッシの体調をさらに評価する必要があり、可能な限りプレーさせるつもりだ」と語ったという。2月3日の練習にもメッシは参加した。

 しかしマルティーノ監督は試合後の記者会見で、「昨日(3日)もメッシを練習(午後5時半から)に参加させたが、午後になって彼の体調を評価した結果、最終的に彼に休養を続けさせることを決定し、出場の手配ができなかった」と説明した(『Yahoo新聞』)。「午後」とはいつだろうか。試合の後半であろうか?

 試合の開始前、スタジアムのディスプレイに映った交代選手のリストにはメッシの名前が入っていた。試合直後にタトラー・アジアが発した声明によれば、タトラー・アジアは試合前にメッシの不参加に関する情報を持っていなかった。翌日(5日)にタトラー・アジアが発した声明によれば、試合当日にマルティーノ監督が提出した正式な選手リストにもメッシの名前が記されていた。また、楊局長によれば、試合開始前、タトラー・アジアはメッシが後半に出場することを再確認したという。

 一方で、インテル・マイアミの公式インスタグラムの投稿を見ると、メッシの名前は先発メンバーにも、交代選手リストにも入っていない。その投稿は「午前3時(東部標準時)」とマークされており、つまり投稿した時点は香港の午後4時、試合開始の時点である。『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』によれば、2月15日、タトラー・アジアのラムニエールCEOは、試合開始前の15分にメッシの欠場を知ったと述べている(この発言は試合直後のタトラー・アジアの声明と矛盾している)。実際、メッシは長いズボンと、サッカーシューズではなくスニーカーを履いてピッチに出てきた。まるでコーチ陣の一員のようだ。ウォームアップする姿も見られなかった。インテル・マイアミは、試合前にメッシの欠場を決定したのに、何らかの理由でそれを言えなかったのか。それとも本当に試合後半まで出場のチャンスをうかがっていたのか? また、発言が矛盾しているタトラー・アジアは、一体いつ欠場の決定を知ったのか?

メッシ欠場に対応する救済策も決まっていなかったのか

 2月5日の楊局長の発言によれば、メッシ欠場のまま後半が始まった時、政府はタトラー・アジアをつうじてインテル・マイアミと連絡を取り、メッシが一刻も早くプレーするよう要請したが、その後タトラー・アジアから、メッシは負傷のためプレーできないとの連絡があったという。さらに、試合終了の10分ほど前、政府はメッシの出場を再度要請したものの、タトラー・アジアをつうじてメッシが出場できないことを再確認した。そこで政府は、メッシがフィールドに現れてトロフィーを受け取るなど、他の救済策を模索するよう即座に要請した。しかしインテル・マイアミやメッシ本人はそれらの要請に応じなかったという。

 楊局長の発言から、以下、3つの問題点があったと考えられる。第1に、メッシの欠場について、インテル・マイアミが正式に主催者に告知すべき時点が契約上明確に定められていなかった可能性がある(もし主催者が試合開始15分前に欠場決定を知っていたのであれば、なぜ政府にそれを伝えなかったのか?)。第2に、メッシの欠場に応じる救済策が契約で明示されていなかったようだ。それゆえ政府は試合終了の間際になって救済策を模索するよう即座に要請しなければならなかったのだろう。第3に、こうした懸念があるにもかかわらず、政府はなぜか今回の試合に補助金を出すことを決定した。2月6日の『明報新聞網』によれば、ラジオ番組の取材を受けた楊局長は「これは商業上の事柄にかかわるため、お金や金額に関連する情報など敏感な商業情報が含まれています。そのため、私たちがそれぞれの詳細を知る必要はありません」と述べたという。

 香港サッカー協会の貝会長によれば、過去の国際親善試合では、選手の欠場に対する減額は契約上定められていたそうである。YouTubeチャンネル『堅離地球・沈旭暉・馮智政』のインタビューで、香港サッカー界のベテラン・コメンテーターである施建章も、出場と欠場に応じて報酬を設定することや、スター選手が何をするかしないかすべて事前に交渉するのは一般的なやり方であると述べた。しかし、今回の主催者はそのような工夫を徹底できなかったようである。

 サッカー関連のイベント・マーケティングを専門とするプロイベンツ(ProEvents)は、香港でのサッカー国際親善試合の開催経験が豊富である。2014年の香港対アルゼンチンの試合(0-7)もプロイベンツによるものであり、メッシは30分間の出場で2得点1アシストを記録した。今回のインテル・マイアミと香港選抜の試合ではプロイベンツはタトラー・アジアの「パートナー」として関わっているが、なぜか自社の経験を共有できていなかったようである。

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